無関心ではいられない内部通報制度(第4回)~公益通報者保護法改正その他の動向と実務上の影響
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2021年04月01日
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◆一定規模の企業内で内部通報体制の整備が義務化
◆匿名の内部公益通報に対する対応の検討が必要

公益通報者保護法改正により、常時雇用する労働者の数が300人を超える事業者に対し、公益通報を受け、通報に関する調査をし、その是正に必要な措置をとる業務(公益通報対応業務)に従事する者(公益通報対応業務従事者)を定めなければならないこととされました。
さらに、今後定められる指針にしたがって公益通報に適切に対応するために必要な体制(内部公益通報対応体制)の整備等をする義務があります。この指針は、消費者委員会の意見を聞いて、内閣総理大臣(権限委任により消費者庁長官)が定めることになっています。
常時雇用する労働者の数が300人以下の事業者については、上記は努力義務とされています。
以下、今回と次回で公益通報体制整備義務について解説します。公益通報者対応業務従事者については、守秘義務との関係を含めて別稿で詳しく解説します。

内部公益通報対応体制の整備義務は、上記指針にそった内部規程の整備・運用による履行が想定されており、指針については検討会の報告書案が公表されています。一方、内部通報制度に関しては、今回の法改正前にすでに民間事業者向けガイドラインが公表されており、上記報告書案とは多くの点で同じ内容となっています。
そのため、ガイドラインにそった内部通報規程を整備・運用している事業者は、基本的にはそれで対応できているということになります。ただ、内部公益通報対応体制特有の対応も必要であることに注意してください。なお、指針やガイドラインは令和3年中の制定・改訂が予定されています。

公益通報の窓口、調査、是正措置については、内部公益通報対応業務をする部署及び責任者を明確にする必要があるとされました。責任者については、内部通報規程でみられる一定のポストに従事する者を定める方法が考えられます。
内部公益通報対応業務をする部署としては組織の実態に応じた設置が可能ですが、たとえば人事部門は通報を躊躇する者がいる可能性に留意が必要とされています。また、事業者内の部署に設置するだけではなく、事業者外(外部委託先、親会社等)に設置することが示唆されています。
匿名の通報については、受け付けた際に個人が特定できないメールアドレスを利用して連絡するよう伝える、匿名での連絡を可能とする仕組み(外部窓口から事業者に公益通報者の氏名等を伝えない仕組み)が例示されています。
ただ、内部通報規程において匿名通報を認めていない場合、内部公益通報については、外部窓口を含めて匿名通報を認めるようにする必要があるかどうかという問題があります。
調査を実施しない正当な理由がある場合として匿名による内部公益通報であるために事実確認が困難である場合が挙げられていることからすれば、事業者には匿名とする前提で事業者から独立した外部窓口には顕名を必要としても指針に反しないとも思われます。ただ、この点は今後の検討課題といえるでしょう。

公益通報対応業務をするにあたって、組織の長らに関係する事案については、これらの者からの独立性を確保する措置(監査役等を報告ラインに加える等)をとらなければならないとされました。
内部通報制度は、事業者内部の不祥事を未然に察知し、または拡大を抑止し、自浄作用によって解決するための制度です。そのため、経営トップが関与する会社ぐるみの違法行為への対応がおろそかな場合もあります。実際、内部通報規程に、経営トップが関与する違法行為についての通報窓口や調査等についての規定がないこともあると思われますので、対応が必要となります。
また、公益通報対応業務を行う者が関係する事業の公益通報対応業務に関与させない措置をとる必要があります。このような関与を排除する者の具体的範囲は内部規程において明確にすることが望ましいとされました。

内部公益通報を受け付けた後、必要な調査をし、是正措置をとり、また、その是正措置が機能しているか確認し、機能していなければ改めて是正に必要な措置(フォローアップ)をとらなければなりません。ただ、調査においては通報者とのコミュニケーションを十分にとるよう努めることが求められており、フィードバックが重視されています。