執筆者:気まぐれシェフ
2023年10月15日

長く暑い暑い暑い夏が過ぎて、やっと秋が来た。
命の危険を感じ中断していた徒歩通勤を再開したので、多少食べ過ぎてもカロリー消費できるはずである。秋にふさわしく、食欲に流されるままになってみようと思う。

人生、食事の回数は限られている。できるだけ旨いものだけを食べていきたいが、旨いといってもいろんな旨さがある。空腹、自分好みの味、まさに今食べたいもの、素敵な盛り付け、料理に合うお酒、心地良い環境、楽しい会話。これらの要素が多いほど旨さが増すのだが、兎にも角にもまずは旨い料理を作らねば。
調理中は、切ったり焼いたりしつつ使い終えた道具を洗ってしまって、合間にビールを飲んで器を出してと、めちゃくちゃ忙しいが、無心になれるからリフレッシュにちょうどいい。そうして料理が完成したら、あとは快適な環境のなかで食すのみ。旨い要素満点の日は、私マジ天才?と思う。

もしも今の記憶のまま人生をやり直すことがあったら、真面目に修行をして料理人になるのも悪くないなと思ったりする。
少し前に、ブラッシュアップライフというテレビドラマがあった。
不慮の事故で若くして命を落とした主人公が、今の記憶を残したままに人生2周目、3周目と何度も人生をやり直す話である。
親も友人も環境も年代も基本的に全てが1周目と同じ設定で、生まれるところからやり直すのだ。最初は自分のために徳をつもうとやり直すのだが、何度も人生を繰り返すうちに次第に周りの人のために生きるようになり、自分の意思でやるべき道を進み最高の人生を作り上げていくのだ。
軽いタッチで描かれているが、自分だったら果たしてどうするだろうかといつまでも心に残り続ける深いドラマだった。
私はどうしたいだろう。この怠惰な性格ゆえにまたしてもゆるゆるの人生を生きるのか、料理人を目指すのか、めちゃくちゃ勉強して人類に貢献するような研究をするのか。今の人生を満喫し尽くしてやり直しを選ばないバージョンだってある。
そういえば「今の記憶のままやり直せるとしたら何歳からやり直したい?」とよく質問してくる人がいた。あの人はもしかしたらすでに何周目かを生きていて、仲間を探していたのかもしれない。藤井聡太八冠なんて10周目くらいなんじゃないだろうか。1周目であんな偉業を達成するなんてできるんだろうか。うちの事務所にも何人かいそうな気がしなくもないしなあ。腹を割って話してみれば意外とやり直し組が多かったりして。

そんなことに想いを馳せながら「本日の気まぐれシェフの秋のひと皿」を口に運べば、今宵もまた至福のひとときがやってくる。