2019年6月株主総会の留意事項
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<ポイント>
◆2019年総会に大きな影響を与える法改正等はない
◆開示府令の改正を念頭に、役員報酬等に関するより実質的、具体的な情報開示の検討を

上場会社の多数派である3月決算の会社が株主総会の準備に入り始める時期となりました。
今年6月の株主総会に直接に影響のある新たな法改正等はありませんが、昨年4月1日より施行されたフェア・ディスクロージャー・ルールや同2月14日に発表された「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案」による株主総会資料の電子提供制度の採用について検討が必要なことは拙稿「2019年株主総会の展望(昨年の総会を振り返って)」で解説したとおりです。
それらに加えて、今回の株主総会では、多くの会社が総会終了後すぐに提出する有価証券報告書に記載する事項を念頭に置いた方がいいと思われます。
本年1月に「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(「開示府令」といいます)が公布され、今年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書(すなわち上記有価証券報告書)に記載する役員報酬や政策保有目的株式の記載内容が変更されました(これら以外にも開示府令には経営方針や事業等のリスクについての情報の充実なども定められましたが適用時期は1年後ですので本稿では上記2項目に絞って述べます)。

役員報酬や政策保有目的株式については旧開示府令でも6(1)「コーポレート・ガバンナンスの状況」の一部として記載する必要はありましたが、今回の改正で同項目と並ぶ項目にいわば格上げされたものです(第二様式、第三様式では4「コーポレート・ガバンナンスの状況」の(4)「役員の報酬等」と(5)「株式の保有状況」になりました)。
その上で「役員の報酬等」については、従来は報酬等の額などの決定に関する方針を定めている場合にはその方針の決定方法など、方針を定めていない場合にはその旨を記載することとなっていましたが、今回の改正ではこれに加えて業績連動報酬等についての情報や役職ごとの算定方法等の情報、さらに報酬額の額などの決定に関する方針の決定権限を有する者の氏名など及び裁量の範囲を記載することになりました。
昨年改定されたCGコードでは監査役会設置会社または監査等委員会設置会社の中には報酬委員会などの諮問委員会を設置しない場合にはエキスプレインが必要となる場合があります(補充原則4-10①)。このCGコードも意識する必要があります。
また、「政策保有目的株式」についても、純投資目的の株式との区別の基準等、保有の合理性の検証方法等について開示及び個別開示の対象となる銘柄数を現状の30銘柄から最大60銘柄に拡大することになりました。

上記のような変更に伴いより実質的、具体的な情報の開示が求められることになり、株主総会対策としても、たとえば報酬委員会を設置して報酬額等の決定権限の所在を明確にすることや政策保有目的株式の保有の合理性について見直しをする必要はないのか検討する必要があります。
また、株主総会の参考書類に記載する必要はないとしてもこれらに関する事項を、株主から質問される前に株主総会で説明することは検討に値すると思われます。
特に役員報酬については、日産のカルロス・ゴーン元会長の役員報酬虚偽記載事件が世間の耳目を集めたこともあり、それなりに株主の関心は高いものと思われます。会社としてはしっかりと準備しておいた方がいいと思います。
なお、株主総会の直前に元号が改められることになりますので注意が必要です。また、関西では6月28日から29日にかけて開催される「G20 OSAKA SUMMIT」も意識しておく必要があります。