労働法改正 ~その2~
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<ポイント>
◆監護休暇・介護休暇が時間単位で取得可能に
◆派遣法関連の改正多数
◆70歳までの雇用確保努力義務
◆同一労働同一賃金改正法が中小企業についても施行

2020年と2021年に労働関連の改正法が数多く施行されました。
そのなかでも重要なものを2回にわけて解説させていただきます。
今回はその2回目です。

2021年1月1日
1.子の監護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになりました。(これまでは半日または1日単位)
休暇の取り方が柔軟になることによりワークライフバランスがとりやすくなることが期待されます。

2.派遣法
(1)職業訓練計画説明の義務付け
派遣元事業主が実施する「教育訓練」および希望者に対して実施する「キャリアコンサルティング」の内容について、派遣労働者の雇入れ時に教育訓練計画の説明をすることが派遣元に義務付けられました。
長期的なキャリア形成が困難な派遣労働者に対し、派遣元が教育訓練や研修、キャリアコンサルティングの機会を積極的に行うことにより、派遣労働者のキャリア形成が期待されます。
(2)労働者派遣契約書の電磁的記録の有効化
これまでは派遣先と派遣元が交わす労働者派遣契約については、書面に記載しておかなければならないとされていましたが、電子契約締結が改めて認められました。
これにより派遣社員に関する契約更新などのさらなる業務効率化が期待されます。
(3)派遣先での派遣労働者からの苦情の処理の義務化
これまで、派遣労働者からあがる苦情対応は、派遣元にのみ課せられていました。
改正により、労働時間や休憩、育児休暇等の派遣先に使用者責任がある事項の場合は、派遣先の誠実かつ主体的な対応が求められるようになりました。また、派遣先は、苦情を申し立てた派遣労働者に不利益が生じることのないよう、適切な対応をしなければなりません。
(4)日雇派遣での解除にも休業手当の支払を厳格化
派遣元や派遣先の都合で日雇派遣契約が解除される場合、派遣労働者に対して別の働き場所を確保できなければ、休業扱いとして休業手当の支払い義務が発生することが明文化します。
なお、日雇派遣は、責任の所在が派遣先企業・派遣会社ともに明確ではないという理由で原則禁止されていますが、職種や年収、年齢などの要件から、例外として認められる場合があります。

2021年3月1日
障碍者雇用率が0.1%引き上げられました。
これにより常時雇用する労働者数が43.5人以上の企業は障碍者を雇用する義務があります。

2021年4月1日
1.70歳までの雇用確保努力義務
企業に対し、以下のいずれかの措置を講じるよう努める義務が課されました。
努力義務ではありますが、いずれは義務化されることが予想されるため企業は準備しておく必要があります。
・ 70歳までの定年引き上げ
・ 定年制の廃止
・ 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
・ 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
・ 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
(a)事業主が自ら実施する社会貢献事業
(b)事業主が委託、出資(資金提供)等をする団体が行う社会貢献事業

2.大企業に対する中途採用比率の公表義務付け
常時雇用する労働者数が301人以上の企業については、直近3事業年度分の中途採用比率について、求職者がインターネット等で簡単に確認できる方法で公表することが義務づけられました。
新卒一括採用を行う大企業に対する雇用の流動化を促すための法改正です。

3.派遣法
マージン率等情報提供義務があるすべての情報について、インターネットによって情報提供を公開することが原則義務化されました。
また、派遣元が雇用安定措置を講ずる際に派遣労働者の希望を聴取することが義務化されました。その聴取の結果は派遣元管理台帳に記載することが義務付けられています。

4.前回ご説明した大企業についての同一労働同一賃金に関する改正法(労働契約法、パート法改正)が中小企業にも施行されました。