労働法改正 ~その1~
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<ポイント>
◆同一労働同一賃金改正法が大企業について施行
◆労働時間の上限規制が中小企業についても施行
◆賃金請求権の消滅時効が3年間に延長(いずれは5年に)
◆パワハラが法規制の対象に セクハラ対策は強化

2020年と2021年に労働関連の改正法が数多く施行されました。
そのなかでも重要なものを2回にわけて解説させていただきます。
今回はその1回目です。

2020年(令和2年)4月1日
1.同一労働同一賃金についての改正法(労働契約法、パート法)が大企業について施行されました。
なお、派遣法の改正については企業規模にかかわらず施行されました。
(1)不合理な待遇差の禁止
同一企業内において、正社員と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与などのあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止されました。
(2)労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
非正規雇用労働者は、「正社員との待遇差の内容や理由」などについて、事業主に説明を求めることができるようになりました。事業主は、非正規雇用労働者から求めがあった場合は、説明をしなければなりません。
(3)裁判外紛争解決手続(行政ADR)が整備されました。

2.労働時間の上限規制が中小企業についても施行されました。
時間外労働(休日労働は含まず)の上限は、原則として、月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできなくなります。
臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、時間外労働は年720時間以内となり、時間外労働と休日労働を合わせた時間は月100時間未満、2~6か月平均80時間以内とする必要があります。 また、原則である月45時間を超えることができるのは、年6か月までです。

3.労基法が改正され、賃金請求権の消滅時効が3年に延長されました。
いずれは5年に延長となりますが、経過措置として当面の間は3年となります。
実務的には、この時点以降に発生した賃金について適用となるので、2023年4月1日以降に改正の影響が発生します。
未払賃金が発生していないか、それまでに管理体制等のチェックが必要です。

4.改正健康増進法が施行され、企業に対し、受動喫煙の防止策を募集や求人の際に明示する義務が課されることとなりました。

2020年6月1日
パワハラ防止対策が初めて法制化され大企業について施行され、パワハラ防止のための以下の取り組みが企業に義務付けられました。(中小企業は2022年4月1日から)
厚生労働省から改善を求められても応じない企業については、企業名が公表されます。
・事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
・相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備(プライバシーの保護・相談者に対する不利益取り扱いの禁止)
・職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

また、セクハラ対策も強化されました。(企業規模問わず)
自社の労働者が社外でセクハラをした場合、被害者側の事業主から事実確認などを求められれば協力することを努力義務として定めました。
また、自社の労働者が他社の労働者等からセクハラを受けた場合、必要に応じて他社に事実関係の確認や再発防止への協力を求めることも会社の義務とされました。

2020年9月1日
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が改定
上記ガイドラインは2018年(平成30年)に初めて定められましたが、改定により、副業・兼業の場合における労働時間管理及び健康管理についてルールが明確化されました。
人生百年時代を迎え若いうちから自らの希望する働き方を選べる環境を作っていくことが必要であり、副業・兼業などの多様な働き方への期待を実現するための施策の一環です。
なお、企業は副業・兼業を認めることが望ましいとはされていますが、義務とはされていません。