スカイプレミアム事件の裁判記録の重要性について
執筆者:
2023年07月15日
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<ポイント>
◆東京地方裁判所の決定書の重要性
◆その他訴訟における資料について

1 スカイプレミアム事件について
先のメルマガでも話題にしましたスカイプレミアム事件について改めて話題にします。証券取引等監視委員会が、SKY PREMIUMINTERNATIONAL PTE. LTD.(シンガポール共和国、金融商品取引業の登録等はない。以下「スカイ社」という。)らに対して、金融商品取引法違反行為(無登録で、投資一任契約の締結の媒介を業として行うこと)の禁止及び停止を命ずるよう求める申立てを行い、2021年12月8日に、東京地方裁判所より、申立ての内容どおりの命令が下されました」(以下「スカイプレミアム事件決定」といいます。)。
【SESCサイト】 https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2021/2021/20211208-1.html
この件で被害にあわれた方が、民事事件としての訴訟提起、または刑事告訴等を考えている場合には、上記事件に関する裁判所の判断が記載された「決定書」(以下「スカイプレミアム事件決定書」といいます。)を取得することが重要です。
2 スカイプレミアム事件決定書について
(1)スカイプレミアム事件決定は、金融商品取引法192条第1項第1号の規定に基づき申し立てられたものです。この事件に関する手続は、非訟事件手続法の定めるところによるとされており、同法により手続は、原則として非公開とされ(非訟事件手続法30条)、また、記録の閲覧謄写は、利害関係を疎明し、裁判所の許可を得なければできません(非訟事件手続法32条1項)。
(2)スカイプレミアム事件の被害者の方も、裁判所に対して利害関係の疎明など所定の手続をすれば「決定書」の謄写(コピー)ができます。
3 決定書の重要性
(1)決定書は、証券取引等監視委員会が調査した結果が証拠として提出されています。一般的な弁護士が採りうる手段では限界がありますが、証券取引等監視委員会が収集した資料は、非常に広範囲に渡っており重要な資料です。
事案の概要や事件の全体像なども裁判所によって整理されていますので、今後、民事訴訟や刑事告訴を考えている方には必須の情報と言えます。特に民事訴訟の提起を考えているときには、決定書だけではなく、提出された証拠も謄写(コピー)することが望ましいです。
(2)他方で、決定書の謄写(コピー)だけであればコピー費用は1万円もかかりませんが、証拠の謄写(コピー)まで考えるとその費用は十数万円が必要となり、弁護士費用と同じく、訴訟提起をためらわせる要因となるのではないかと思います。
4 その他、被害者が提起した民事訴訟手続からの資料収集
(1)被害者によって、集団訴訟から個別の訴訟まで、いくつかの訴訟が提起されています。こうした訴訟手続の記録についても、閲覧だけであれば誰でも請求できますが(民事訴訟法第91条第1項)、謄写(コピー)までしたいとなると「利害関係の疎明」が必要になります(民事訴訟法第91条第3項。一部裁判所では、謄写を拒絶されることがあるかもしれませんが、当該拒絶に対しては不服申立てを行うこともできます。)。
(2)被害者による民事事件の記録では、訴訟提起した被害者の法律上の主張とこれに対する相手方の反論が「準備書面」によって展開されています。取り寄せが必須ではありませんが、先行する訴訟手続がある場合には、こうした準備書面の謄写をして対策を立てることも考えられます。
また、スカイプレミアム事件における証拠の全てのコピーが難しいときには、他の事件で提出されている証拠を謄写することでコピー費用を抑えることも考えられます。
5 刑事事件に関する資料
今後、被害者の方々からの刑事告訴等により捜査機関が捜査に着手することも考えられます。刑事事件の結果を待てば、刑事事件の記録の謄写(コピー)でさらに資料が集まるかもしれません。不起訴事件の記録が、裁判所に係属中の事件の記録か、確定判決の事件の記録かによって異なるところはあります。
ただ、一般論として言えば、時間の経過とともに、加害者側による資産の散逸、隠蔽なども考えられ、こうした刑事事件の結果を待っていては全額を回収できない可能性が高まっていきます。
なお、被害回復給付金支給制度もありますが、申請が必要ですので注意が必要です( https://www.kensatsu.go.jp/higaikaihuku/index.htm )。
6 最後に
以上のように訴訟・非訟手続から訴訟資料を集める方法を紹介しましたが、一般の方が自分で手続をしようとするのは結構な手間がかかります。弁護士に訴訟事件を依頼すれば、その事件処理の中で対応してくれますので、あえて知る必要性は低いといえます。
しかし、スカイプレミアム事件では、被害額が100万円くらいの被害者も多いように聞きます。弁護士への依頼の前に自分でできることは自分でしたい、という方も多いのではないかと思い、参考までに記事にしてみました。