無関心ではいられない内部通報制度(第10回)~公益通報者保護法改正その他の動向と実務上の影響

 池野 由香里

2021年05月15日

<ポイント>
◆経営層に関する公益通報には独立性の確保が必要
◆外部窓口の存在も周知する必要あり

内部通報規程は、事業者内部の不祥事を未然に察知し、または拡大を抑止し、自浄作用によって解決するための制度です。そのため、経営トップが関与する会社ぐるみの違法行為には対応しづらい面があります。
実際、内部通報規程において、経営トップが関与する違法行為についての通報窓口や通報後の調査等について規定されていないこともあります。民間事業者向けガイドラインでも社外取締役や監査役等への通報ルート等、経営幹部からも独立性を有する通報受付・調査是正の仕組みを整備することが適当であると述べるにとどめています。
指針では、組織の長や経営幹部に関する公益通報についてはそれらの者から独立性を確保する措置をとらなければならないとしています。その方法としては、監査役等の監査機関を通報窓口として加えること、通報を受けた監査機関が調査等を行うことが考えられます。
規定としては、たとえば「当社の経営層に関する事案については監査役を通報窓口とすることができ、役員及び従業員は監査役の調査に協力しなければならない。」とするなど組織の実情に合わせた改正が検討される必要があります。その際、法律事務所を外部窓口としている場合、同様に監査役が法律事務所からの通報の報告先となります。
また、通報内容が公益通報対応業務従事者の利益と相反する場合に公益通報対応業務をさせない旨の規定が必要であり、民間事業者向けガイドラインも同様とされています。内部通報に関して、たとえば、「法務部に関する事案については監査室を社内窓口とする。」とすることが考えられます。この場合、公益通報対応業務従事者も同様に監査室長とする等の対応を検討すべきです。

匿名による通報については、指針では、調査をしなくてもよい正当な理由のある場合を除いて、通報を受け付けたうえで、必要な調査をしなければならないとしています。民間事業者向けガイドラインでも匿名の通報も受け付けることが必要であるとしています。
ただ、内部通報規程で、たとえば「匿名通報は本規程による通報として扱われない」としつつ、通報者から社外窓口(弁護士)に対して顕名であれば、社外窓口(弁護士)から会社への報告の際には匿名とし、社外窓口(弁護士)は通報者の情報を秘匿することになっている場合も多いと思います。
私見としてはこのシステムで指針は充足していると考えていますが、公益通報に限っては、通報窓口に匿名で直接通報することを認めることは検討していいと思います。ただ、匿名による場合、事実確認が困難な場合には調査を実施しないことがある旨を併せて規定しておくべきでしょう。

指針では、公益通報者保護法及び内部公益通報体制について、役職員や退職者に対して教育・周知を行わなければならないとしています。ガイドラインでも、経営幹部及び全ての従業員に対して周知・研修が必要としています。
事業者の規模や種類に応じて対応すればよいと思いますが、公益通報に関しては、外部通報が公益通報法により保護されている点を含めた公益通報保護法全体の内容を役員、従業員及び退職者に周知教育する必要があります。内部通報規程において、行政機関に対する外部通報の保護要件を記載することも一案だと思います。