無関心ではいられない内部通報制度(第11回)~公益通報者保護法改正その他の動向と実務上の影響
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<ポイント>
◆2種類の認証制度のうち現在は自己適合宣言制度が実施
◆内部通報規程等の資料により認証基準を満たしていることを立証

実効性ある内部通報制度を適切に整備・運用している事業者では、従業員等からの情報が早期に経営陣等に届き、自浄作用により問題が未然防止又は早期発見され得るため、その事業者が提供する製品・サービスは安全・安心である可能性が高いといえます。
それは、消費者・取引先からの信頼、企業ブランドの向上、金融市場からの評価、公共調達における評価、優秀な人材の確保という企業価値を増大させる結果を生むことになります。
内部通報の認証制度は、このような好結果をもたらすよう、内部通報制度に関する事業者のさらなる取り組みを促進するためのインセンティブとして導入されました。

認証制度としては、事業者自らが自身の内部通報制度を審査した結果を登録する自己適合宣言制度、中立公正な第三者機関が事業者の内部通報制度を審査・認証する第三者認証制度があります。
まずは比較的簡便な仕組みといえる自己適合宣言制度が導入されました。第三者認証制度は、自己適合宣言制度の推移をふまえて将来の導入が予定されることとなりました。
登録を希望する事業者は、指定登録機関において登録することになりますが、2018年12月に商事法務研究会が指定登録機関になりました。2021年5月7日現在、107社の登録がされています。

登録事業者は、民間事業者向けガイドラインに基づく内部通報制度認証基準に適合していることを裏付ける資料(申請書類)を準備して指定登録機関に申請します。
指定登録機関は、申請書類の内容から登録事業者が認証基準に適合していることを確認して登録し、登録証を交付し、登録事業者の名称等をウェブサイトにおいて公表します。

内部通報認証基準は合計38ありますが、そのうち25の必須項目のすべて及び13の任意項目のうち6項目(例外的に5項目)について適合している場合に基準を満たしていると判断されることになります。
認証基準に適合していることを示すために、内部通報規程を提出して各項目に対応する制度設計がされていること、具体的取り組みを記載して実施がされていることを表すことが一般的です。以下に具体的項目について述べます。

内部通報制度の意義・目的の明確化(必須)、経営トップによるメッセージの発信(必須)については、制度整備としては規程に記載した上で、実施例として少なくとも年に1回は役員会及び内部通報制度に携わる担当者会議等で確認をしていること、ポスター等による周知が示されています。

改正公益通報者保護法に関連するものとしては以下の例が挙げられます。
通報窓口利用者・通報対象事実の範囲等の設定の項目(必須)では、制度整備の例として退職者と役職員が含まれています。
経営幹部から独立性を有する通報受付及び調査・是正の仕組みの項目(任意)では、同例として、定期的及び必要に応じて、また経営陣に関する通報は常勤監査役等に報告することが含まれています。利益相反関係の排除(任意)では、規程に明記した上で、実施例として実績を示す資料もしくは責任者の誓約書が示されています。
内部通報制度に対する従業員の意見の把握(任意)、通報対応に関する質問・相談への対応(必須)、内部通報制度の実効的な運用のために必要な事項の周知・研修(任意)について必要事項を規程に記載すること必要とされています。
通報者等に対する不利益取扱いについては6項目(うち必須5項目)あります。規程に不利益取扱いの禁止に関する規定を記載しますが、不利益の具体的類型等、不利益があった場合の救済に必要な事項、不利益を行った者に対する事項が含まれます。
これらの実施例としては、管理職研修等における禁止される不利益取扱いの周知が挙げられています。また、不利益を受けた者の救済措置等や不利益を与えた者に対する処分等についてのマニュアルの整備も挙げられています。

外部窓口については通報対応に係る業務を外部委託する場合における中立性・公正性等の確保や外部窓口の信頼性確保の2項目(任意)あります。
前者の実施例として外部窓口との契約書に中立性等の明記することが挙げられていますが、後者についても契約に守秘義務を明記することが挙げられると思います。