割賦販売(自社割賦)において実務上注意すべき点について
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<ポイント>
◆特定の商品、権利または役務を販売する場合にのみ割賦販売として規制される
◆割賦販売業者には契約の締結に至るまで一定の義務が課せられる
◆割賦販売契約の条項にはいくつかの制限がある

 

 割賦販売(自社割賦)、すなわち販売業者がクレジットカード会社等の第三者を介さずに自ら商品、権利または役務を、2ケ月以上の期間、3回以上に分割して支払う方法で販売する場合には、割賦販売法等の法令に注意する必要があります。以下、実務上特に注意すべき点について解説していきます。

1 指定商品、指定権利または指定役務に該当するかの確認
 割賦販売法において「割賦販売」と定義され、その規制の対象になるのは、割賦販売法施行令の別表1~1の3に定められた「指定商品」、「指定権利」または「指定役務」を販売する場合のみです。これらに該当しない商品等を販売する場合には、割賦販売法上の割賦販売には該当せず、規制はありません。そのため、まずは自社の商品、権利または役務(以下「商品等」といいます)が、この指定商品等に該当するかどうかを確認する必要があります。
  
2 契約締結前の表示義務
 割賦販売を行うにあたっては、以下の事項を表示する義務があります。
 ・商品等の現金販売価格(=一括払いの場合の価格)
 ・商品等の割賦販売価格(=分割払いの場合の価格。分割払いの場合、手数料等により一括払いの場合に比べて金額が高い場合が多い。)
 ・支払期間及び支払回数
 ・割賦販売の手数料の料率

3 契約締結時の書面交付義務
 割賦販売について契約を締結する場合、割賦販売業者は、商品等の購入者に対して、法令の定めるところにより、契約の内容を明らかにする書面を交付しなければなりません。詳細は割愛しますが、単に契約書を交付すればよいわけではなく、法令の定める事項を漏れなく記載した契約書を交付する必要があります。

4 期限の利益の喪失条項の制限
 分割払いの契約においては、代金支払いを怠った場合には期限の利益(分割払いの利益)を喪失し、直ちに一括で残債務を支払うという条項が設けられていることがよくあります。いわゆる期限の利益の喪失条項です。しかし、割賦販売においては、かかる条項は制限されています。
割賦販売において支払いが滞った場合、割賦販売業者は、まず、20日以上の相当な期間を定めて書面で支払いの催告をしなければなりません。それにも関わらず支払いがない場合にはじめて、割賦販売業者は残債務を一括で支払うよう請求することができます。

5 契約の解除についての制限
 契約の解除についても同様の制限があります。割賦販売業者は、支払いが滞った場合でも、直ちに契約を解除することができません。前項と同様、割賦販売業者は、まず、20日以上の相当な期間を定めて書面で支払いの催告をしなければなりません。それにも関わらず支払いがない場合にはじめて、割賦販売業者は契約を解除することができます。

6 損害賠償額の制限
 通常の契約と同様に、割賦販売業者は、商品等の購入者の債務不履行または契約解除に基づき、損害賠償請求をすることができます。しかし、パターンが多いため詳細は割愛しますが、この場合の損害額は、割賦販売法の定める上限を超えることができません。