労働審判制度の新設について

 池野 由香里

2006年02月15日

労働審判法が本年4月1日から施行されます。

企業と個々の労働者との間での紛争が増加しているのを受けて、それらの紛争の新たな解決方法として、労働審判制度が定められました。
「労働審判法」の成立は平成16年4月でしたが、平成18年4月1日から施行されることが決まりました。

これまで、労使間の個別の紛争の解決方法としては、裁判所が関わるものとしては、通常訴訟、仮処分、調停があり、行政機関が関わるものとしては、平成13年10月から施行された個別労働関係紛争解決促進法に基づいて行われる都道府県労働局の助言・指導や、紛争調整委員会のあっせん・調停等がありました。
今回、新たに創設される労働審判制度は、地方裁判所が行う制度です。
労働審判制度の特徴は、(1)裁判官1名と労働関係の専門的な知識経験を有する者2名(労使双方から1人ずつ)が構成する労働審判委員会が紛争処理を行い、(2)原則3回以内の期日で審理し、迅速な処理がなされ、(3)調停による解決をいつでも試みることができ、(4)審判がなされたあと、当事者の一方から異議が出れば、労働審判申立のときに遡って訴えの提起があったものとみなされる、という点です。
この制度になじむのは、争点が複雑ではない事件、紛争の当事者双方が早期に解決できるのであれば譲歩をすることも可能であるという柔軟な姿勢を持っている場合などが考えられます。
反対に、詳細な事実認定が必要であったり、争点が複雑多岐であったりする場合であれば、原則3回の審理で結審というこの手続きの構造になじみませんし、双方が全く妥協の余地がなく、不満が少しでもあれば審判に対し異議を述べることが明らかであれば、せっかく審判がなされても無駄になる可能性が高いので、この手続きにはなじみません。
迅速というのがこの手続きの特色なので、当事者やその代理人にも充分な準備が要請されることになりそうです。
なお、審理回数が限られているため、充実した審理を行う必要があり、かつ、審判の結果に異議があれば訴訟に移行するという性質を有する手続きであるため、弁護士に依頼せずに当事者本人で申立をするということはあまり想定されていないようです。

率直に言うと、労使での争いがこじれた場合には感情的な問題もあり、双方とも初期段階で妥協をするのが難しい場合が多いので、この手続きがどの程度利用価値があるのかは今の段階では疑問を持っています。
手続きのなかで、どの程度調停が成立するのか、という点がこの制度の利用価値を決めるのではないか、とも考えています。