労働審判制度が平成18年4月1日からスタートしました

労働審判制度の新設については、以前もこの場でご紹介しましたが、スタート後の動きが新聞等で紹介されましたので、ご説明したいと思います。

労働審判制度は、(1)解雇や、労働条件の切り下げ、配置転換などの比較的争点が複雑でない紛争について、(2)裁判官1名と労働関係の専門的な知識経験を有する者2名(労使双方から1人ずつ)が構成する労働審判委員会が紛争処理を行い、(3)原則3回以内の期日で審理し、迅速な処理をおこない、(4)調停による解決をいつでも試みることができる制度です。
調停に至らない場合には、原則として、3回目には、労働審判委員会が審判(紛争についての判断)を出すことになっていますが、2週間以内にどちらかが異議を申立てると、審判は失効し、裁判に移行します。

4月から6月の3カ月間の全国での受付件数は278件となっています。
東京地裁では、85件の審判を受けつけ、6月末までに15件について結論が出ました。
うち12件は調停により解決しています。
調停により解決した12件のうち、7件は1回目、3件は2回目に決着しており、早期の解決が目立ちます。
申立から結論が出るまでの日数は平均で49.2日(最短28日、最長75日)です。
早期に決着した案件についてのみのデータであるとはいえ、通常の裁判の場合にはどんなに短くても半年程度はかかることを考えると、非常に早期の決着です。
主に労働者の保護のため、裁判前に緊急に仮の裁判所の判断がなされる仮処分と比べても、仮処分の場合、最終解決は通常訴訟によらねばならないことを考えると、この制度の決着の速さは特筆すべきものがあります。
他に労働紛争を解決する手段として、都道府県労働局が行う「紛争調停委員会によるあっせん制度」もありますが、労働審判制度のように訴訟を前提としていないため、企業が出席を拒むことも多いのが難点であり、その点でも労働審判制度にはメリットがあります。

ただし、労働審判制度は、迅速性を重視するため、労働者個人で手続を進めることが困難であり、費用面での負担は、大幅に軽減されてはいないようです。
今後、費用の点も含めてどの程度利用しやすい制度になるかが注目されます。