令和3年特許法改正(2022年4月1日施行)について~その1
【関連カテゴリー】

<ポイント>
◆令和3年改正特許法について2022年4月1日から施行されたものを解説します
◆まずは特許権等侵害訴訟等における第三者意見募集制度の導入についてポイントを解説します

1 今回の改正により、特許法第105条の2の11を新設し、当事者による証拠収集手続として、特許権等侵害訴訟において、裁判所が、広く一般の第三者に対し、その事件に関する特許法の適用その他の必要な事項について、意見を記載した書面の提出を求めることができる制度(第三者意見募集制度)が創設されました。

2 特許事件は民事訴訟手続で争われますが、民事訴訟手続では確定判決の効力は基本的に訴訟当事者間のみに及ぶとされ、裁判所の判断の基礎となる証拠の収集と提出は訴訟当事者の責任であり権限とされるのが原則です。つまり訴訟当事者ではない第三者は、基本的に判決効が及ばず、証拠を提出することはできません。
しかし、特にIoT関連技術などは、情報通信、自動車、家電、ロボットなど広く産業界に普及し、利害関係が複雑に入り組んでいるため、裁判所の判断が事実上大きな影響を及ぼす可能性があります。他方で、当事者にとって第三者の事業実態等の証拠を収集・提出することが困難な場合があります。このような場合に、第三者の意見を募集する必要もありました。
実際に、知的財産高等裁判所において、標準必須特許におけるFRAND宣言に関して争われたApple Japanと三星電子の知財高裁事件(知財高判平成26年5月16日判決)では、知財高裁が第三者からの意見募集が行われました。
しかし、意見募集を実施する際に、全ての当事者の合意を得ることは困難な場合があるため、必ずしも全ての当事者が合意をしている場合でなくとも広く一般の第三者からの意見募集を行うことができる制度を創設する必要があると考えられ、今回の改正がなされました。

3 制度の概要
(1)意見募集の主体となるのは特許権等に関する訴えについて管轄を有する裁判所です(民事訴訟法6条1項各号)。
(2)第三者意見募集制度を行うためには、当事者の申立てが必要です(第1項及び第2項)当事者による証拠収集手続の一つとして位置づけられたためです。
(3)裁判所が、「必要があると認めるとき」に採用されます。必要性は、当事者の意見を聴いた上で、当事者による証拠収集の困難性、判決の第三者に対する影響の程度など、様々な事情を総合的に考慮して判断されます。
(4)裁判所は、意見募集を行うと判断するにあたっては「他の当事者」の意見を聞かなければなりません。
(5)意見募集の対象者は、「広く一般」の第三者です。特定の第三者を指定できませんが、法人・個人を問わず日本国内に住所若しくは居所を有しない外国人も可能とされています。
(6)意見募集を行う事項は、「当該事件に関するこの法律の適用その他の必要な事項」にです。
(7)訴訟当事者は、提出された意見書の閲覧、謄写等を請求することができます。ただし、意見書の保存又は裁判所の執務に支障があるときは、することができません。
(8)第三者が裁判所に提出した意見書は訴訟記録を構成しないと解されています。そのため、訴訟当事者は、提出された意見書を閲覧、謄写等した上で、各自が裁判所の判断の基礎とすることを望むものについては、裁判所に書証として提出する必要があります。
(9)意見募集が行われた場合において、訴訟当事者又はその訴訟代理人が第三者に対して意見書を提出するよう働きかけを行うことは、意見書作成費等の対価の供与も含め、禁止されるものではないとされています。

4 以上の第三者意見募集制度は、実用新案権又はその専用実施権の侵害に係る訴訟に妥当するとして実用新案権についても利用できます(実用新案法30条で準用)。

参考:特許庁の解説サイト
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/kaisetu/2022/2022-42kaisetsu.html