令和元年会社法改正(第5回)~社外取締役について~

 木ノ島 雄介

2021年12月15日

<ポイント>
◆社外取締役の選任が義務化されたため、複数または補欠の社外取締役の選任の検討を
◆社外取締役の一定の行為が会社の業務執行とされない方策ができた

改正法では、監査役会設置会社である上場会社等において社外取締役の選任が必須となりました。
社外取締役については、改正前会社法により社外取締役を置くことが相当でない理由(非選任会社)の説明義務、上場規程による取締役である独立役員の確保努力義務、CGコードによる独立社外取締役選任についてComply or Explainの要請という状況にあり、東京証券取引所の2020年9月7日の調査報告では同所上場会社の1.1%(42社)のみが社外取締役を置いていませんでした。
このように多くの同上場会社等は対応済みの改正です。
しかし、社外取締役を欠いた取締役会の決議は直ちに無効とはいえませんが、遅滞なく選任しなければならず、これに反した場合には無効になる可能性があります。
そのため、社外取締役を1名しか選任していない場合、複数名の選任や社外取締役が欠けることに備えて補欠の社外取締役の選任等の必要について検討しなければなりません。

会社と業務執行取締役(執行役を含みます)に利益相反状況があり、その業務執行取締役による業務執行では株主の利益を損なうおそれがあるときは、その都度、取締役会の決定によって、社外取締役に委託できることになり、かつ、それにより社外性を失わないとの規定が新設されました。
社外取締役は、会社の業務を執行した場合には社外性を失うとされていますが、一定の場合に社外取締役に期待されている行為が妨げられないようにするためです。
社外取締役は取締役会に出席するだけではなく、様々な方法で会社に関わることがあります。
会社法改正前に公表された「法的論点に関する解釈指針」では、内部通報の窓口になること、企業不祥事の内部調査委員会の委員として調査に関わること、コンプライアンス委員会に出席して自らの経験をもとに役職員にレクチャーを行うこと、MBOにおける行為(たとえば買付者との間で交渉を行うこと)など9種類の例示がされています。
社外取締役がこれらの行為をすることが会社にとって一般的に有用であることは争いのないところと思いますし、上記解釈指針ではこれらは業務執行者の指揮命令系統に属しては行われない行為として、原則として業務執行にあたらないとされています。
しかし、上記のような会社にとって有用な行為が業務執行にあたらないとの結論は、改正前の会社法の文言から当然に導きだされるとまではいえず、少なくとも業務執行とされないよう予防する方策の有用性があるとされました。
このように解釈による不確実性を排するため、いわゆるセーフ・ハーバー・ルールとして上記規定が新設されました。上記規定により、それまで業務執行の範囲外とされていた行為が業務執行と解釈されるよう変更されたわけではありません。なお、役職員へのレクチャーのように後述の利益相反関係があるとは考えにくいものは従前と同じく業務執行にはあたらないと整理できるでしょう(私見)。

社外取締役の業務執行が認められるためには、会社と取締役が利益相反状況にあることが必要ですが、典型的な場合として、取締役が当該会社の株式の買収者となるMBO、支配株主と少数株主との間の利害関係が対立し得る親子会社間の取引が挙げられます。
MBOでは、当該会社を経営する取締役等が一般株主から同社の株式を取得する取引であり、取締役会の意見表明について検討すること、情報収集、買付者たる取締役等と交渉することが考えられます。
親子会社間取引では、子会社の取締役等が支配株主である親会社の利益をはかることにより子会社の不利益になることが考えられるので、子会社の少数株主の利益を擁護するよう親会社と交渉することが考えられます。
上記のような場合に、社外取締役が誰からの監督も受けずに継続的に業務の執行をすることがないよう、その都度、取締役会の決議を得ることが必要です。
このように取締役会の監督に服することにはなりますが、業務執行取締役の指揮命令に服してはなりません。

なお、会社法改正前からMBOをおこなうにあたっては特別委員会が設置され、その構成委員として社外取締役、社外監査役、社外有識者が選任されてきました。
2019年6月28日に経済産業省が公表した新MBO指針では、社外取締役が委員として最も適任であるとされています。その理由として、社外取締役は、(1)株主総会において選任され、会社に対して法律上義務と責任を負い、株主からの責任追及の対象ともなり得ること、(2)取締役会の構成員として経営判断に直接関与することが本来的に予定された者であること、(3)対象会社の事業にも一定の知見を有していることを挙げています。
特別委員会は会社から諮問や交渉の委嘱を受けてきましたが、上記のとおり社外取締役にこれらの行為を委託できると改正法により明定されたことは、特別委員会の活動拡大も想定すると実務的に意義あるものといえます。