スカイプレミアム事件(エージェントに対する勝訴判決について)
【関連カテゴリー】

<ポイント>
◆エージェント(勧誘者)に対する訴訟
◆勝訴判決の影響

 

1 スカイプレミアム事件とは
(1)改めてスカイプレミアム事件に関するこれまでの経緯をおさらいします。
証券取引等監視委員会が、SKY PREMIUMINTERNATIONAL PTE. LTD.(シンガポール共和国。以下「スカイ社」という。)らに対して、金融商品取引法違反行為(無登録で、投資一任契約の締結の媒介を業として行うこと)の禁止及び停止を命ずるよう求める申立てを行い、2021年12月8日に、東京地方裁判所より、申立ての内容どおりの命令が下されました。
(2)その後2024年2月21日、福岡、茨木などの6府県警の合同捜査本部は、スカイ社の最高経営責任者ら4人を金融商品取引法違反(無登録営業)容疑で逮捕し、同年3月14日付で同法違反の罪で起訴したとの報道がなされています(FBS福岡放送)。
その他に福岡区検はスカイ社の代理店代表の5人を金融商品取引法違反(無登録営業)で福岡簡裁に3月25日から28日付で略式起訴し、また残る7人については不起訴としたという報道もなされています(読売新聞オンライン、2024.4.12記事)。

2 大阪地裁令和6年3月28日判決
(1)各地で民事訴訟が提起されているようですが、被害者を原告とし直接の勧誘者であるエージェントを被告とする訴訟で請求が一部認容される判決がでました。大阪地裁令和6年3月28日判決を紹介します。
その概要は以下のとおりです。
(2)判決によると、原告である被害者は投資経験がなかったこと、被告であるエージェントはファイナンシャルプランナーの資格を有していたことが認定されています。
(3)また、エージェントによる説明内容や勧誘の経緯について、原告(被害者)による「取引口座申込書」の記載内容等を含めて具体的な事実関係が証拠に基づき認定されています。
(4)以上のとおり詳細な事実認定をした上で、(a)被告(エージェント)が、不特定多数の者に対して、報酬を目的として、反復継続して勧誘を行っていたこと、(b)ライオンプレミアムは、マネーマネージャーに対する運用益の40%の報酬を控除した後の年利が20%以上になる高利率の商品であり相当投機性の高いものであること等を考慮して、被告(エージェント)の説明義務違反を以下のとおり判断し、不法行為の成立を認めました。
「被告は、ライオンプレミアムの勧誘をする際、信義則上、抽象的かつ一般的なリスクではなく、原告において十分な投資判断ができるようにするため、当該商品に即したリスクの有無、程度及び発生原因について具体的に説明する義務があると認めるのが相当である。しかしながら、被告は、・・・原告に投資経験がなく、原告の理解が遅いと認識しながらも(被告本人)、ライオンプレミアムが高配当で安全である面については説明する一方、そのリスクについて、ライオンプレミアムの仕組みに即したリスクの有無、程度及び発生原因について具体的に説明しなかったと認められる。」
(5)他方で、以下のとおり判示してエージェント(被告)の過失の内容も加味して4割の過失相殺が認められています。
「ライオンプレミアムがFX取引を行うものであることは認識しており、その年齢、職歴を通じた社会経験に照らせば、高配当かつリスクのないFX取引は、想定し難いことを認識し得たといえる。しかしながら、原告は、契約の相手方に注意を払うこともなく、A及び被告の言動を信じ、その安全性を調査確認することのないまま投資をしたのであるから、投資者として当然行うべきリスク管理を行わなかった過失があるといわざるを得ない。」

3 判決の影響
本判決は、当該事例における具体的な事実関係のもとで請求が一部認容されたものであり、被害者がエージェントを訴えれば勝訴できると一般化できる判決ではありません。また、控訴もされているようで、大阪高裁でこの判断が維持されるとも限りません。
しかし、少なくともエージェントに対する請求が認められる事例が出たという意味では、被害者にとって大きな価値のある判決です。
なお、真偽のほどは不明ですがSNS上では本件のエージェントが予め定められた本人尋問期日をすっぽかしてしまったという情報もあります。もしこれが本当であれば判決に大きな影響を与えているであろうと想像されます。

4 法律構成に関しての若干の解説
エージェントもスカイプレミアムに投資をしていた場合が多いと思われますが、このような場合、詐欺行為、詐欺の故意が認められにくく、詐欺を理由とする不法行為での請求は困難と考えます。そのため、本件のように調査義務違反で主張を組み立てることになりますが、一方で被害者も投資に際して十分に調査しなかったという側面は否定できません。
調査義務違反で不法行為を構成する場合は、過失相殺の対象となることを回避するのは、例えば被害者が投資経験のない高齢者であったなどの特段の事情がない限り、一般的には難しいであろうと考えます。