執筆者:イスラム建築マニア
2006年04月15日

犬の飼い方の本を読んでいると、興味深いことが書いてあった。
犬は「オスワリ」や「マテ」など、だいたい20くらいの言葉を覚えるが、犬によっては100近い言葉を覚えるものもいて、「これが終わったら遊ぶから、ちょっと待っててね。」くらいの文章なら理解するようになるというのである。
もちろん固体差はあるものの、この違いは人間がどれだけ犬に話しかけるかによるというのだ。犬にとっての人間の言葉は、人間にとっての外国語のようなものであり、毎日、どれだけ言葉のシャワーを浴びるかによって覚える言葉の量に差が出るのである。
日本で1年英語を勉強してもなかなか聞きとれないし話せない。しかしアメリカで1年暮らせばずいぶん聞きとれ話せるようになる。
犬も同じである。毎日、いっぱい話しかけてもらって外国語(人間語)をたくさん聞いている犬は、あまり話しかけてもらっていない犬に比べて覚える言葉の量が圧倒的に多いのである。

飼い主が毎日いっぱい話しかけるだけで、犬が人間の会話を理解するようになるなんて!
この時、うちにはちょうど何でも吸収しどきの3ヶ月のキャバリアがいた。
今だ!お前が人間語という外国語を覚えられるように毎日、毎日たくさん言葉を聞かせてやるぞー。

そして、毎日、朝になれば「アサ」と言って窓から外の景色を見せ、晩になれば「バン」と言って外を見せている。ごはんのときには「ゴハン」と言い、終われば「オワリ」という。そして、「ツギ、アソボウ」と言ってから遊び、「オワリ」と言ってやめる。
犬が吠えたときはじっと観察して(ああ、これは外のヘリコプターの音を怖がっているな)と思えばすぐに窓の外を見せ、「ヘリコプター」と指をさし、「ダイジョウブ」と言う。(ああ、家具に反射した電気の光を怖がっているな)と思えばすぐにスイッチを入れたり切ったりして見せ、原因が電気であることをわからせ、「デンキ」「ダイジョウブ」と言う。
人間の子供に言葉を教えるように毎日、毎日、繰り返し、繰り返しすべてのものや動作を言葉であらわして聞かせている。
その甲斐あって、今ではイアちゃん(愛犬キャバリア・6ヶ月)がごはんを食べこぼしても「おちたよ」と言うだけで、すぐにその辺りをさがし、こぼした餌を拾うようになった。
私がお風呂に入っている最中に、近所の工事中の音に怯えて吠えても「イアちゃん、おいで」と言ってお風呂に呼びつけ、「ダイジョウブ」と言ってあげるだけで吠えるのをやめるようになった。飼い主が「ダイジョウブ」と言ったものは怖がる必要がないということを理解してくれた。
本当に毎日特別なしつけや訓練をすることなく、ただいっぱい話しかけているだけで犬はどんどん言葉を覚え、飼い主が話す言葉を楽しそうに聞く。

犬のしつけの本では「おやつ」をごほうびに「マテ」や「オスワリ」や「フセ」を教えるものが主流である。単発的なコマンドばかりである。それができて飼い主にほめられるのは犬にとって幸せだろうが、もう一歩進んで、言葉がわかり、飼い主が自分に何を話しかけているかがわかれば、犬は毎日がもっと楽しく幸せではないだろうか。

先日、NHK教育テレビで「私の教え方」ということで、小学校の先生がどうやってとび箱のできない子供にできるように教えているかの番組をしていた。何気なく見ていたが、「もういちど」「よしよし」「できた」などの言葉がテレビから聞こえた瞬間、イアちゃんがテレビに反応して釘付けになった。テレビから自分の知っている言葉が次々と聞こえてきたからだ。
効果があらわれている。いいぞ、その調子。
そのうち、テレビでも見て留守番していてくれるようになれば助かるのだが・・・

最初に本で100近い言葉を覚え、文章を理解する犬もいると読んだときは、すごいなぁ、そうなってくれればいいなぁととても高い理想のように思ったが、今ではそのハードルはそれほど高いものではない気がしている。
もし自分が犬なら、かわいがられ何の心配もなく暮らすのは理想だが、さらに自分をとりまく人間の会話がわかれば毎日がもっと楽しいだろうなと思う。
犬の人生は飼い主にかかっている。私に飼われた以上はできるだけ楽しく幸せな人生を送らせてやりたいものである。