事務職員のエッセイ

2021年06月15日
ラジオの時間

ずいぶん前に、脚本家の三谷幸喜さんが初メガホンをとった『ラヂオの時間』という映画がありましたが、日常過ごす実際のラジオの時間っていいものだなと最近噛みしめています。

数年前にオーディオが壊れてしまい、しばらくラジオから遠ざかっていたのですが、おうち時間が増え、やっぱりまた聞きたくなって、古いラジカセを引っ張り出してきて再び聞き始めました。
単にラジオを聞くといっても、聞き方は千差万別、人それぞれでしょう。
家事をしながら、車を運転しながら、学生だと勉強しながら‥。
「ながら」作業の方が逆に、集中できることもしばしば。
有効的に時間を活用できた気がするこの「ラジオの時間」は、時間とうまくつきあった!という満足感がありませんか?
この時期、衣替えなんて「ながら」にうってつけです。

番組のチョイスもまた十人十色。その人の趣味嗜好が多分に反映されることでしょう。
リスナーからの身近な出来事の投稿やお悩み相談。語学講座などの教養番組‥。

私は専ら音楽番組を聞いています。
ふた昔前までは「電リク」なんてシステムがあって、リクエストの電話がジャンジャン鳴るのをバックに、DJのテンポのいい曲紹介とともに流行りの歌を聴くのがなんだか臨場感があって、わくわくしたのを覚えています。
今でもリクエスト番組は健在で、すっかり流行が気にならない世代にはなりましたが、最新のヒットソングってこんななのか?!と驚いたり、また、新旧・洋邦問わず、音楽のジャンルも年代もさまざまに曲がかかるので、自分では選ばないような曲も耳にすることができ、大いなリフレッシュになります。

気分転換で音楽を聞くだけなら、ラジオじゃなくても、手持ちのCDなんかをかければいいですし、今だとSNSで気軽に聞けますが、ラジオの良さは、単に音楽を聴いて癒しの時間になるだけでなく、ラジオの向こう側の人たちとつながる感じがまた心地よいものです。

日常の中のちょっとした非日常。
特別の中の普通とでもいうのでしょうか。

聞く側も「普通」ですが、送り手も「普通」。
遠くにあってもあくまで「身近」なのがラジオの魅力です。
人気アーティストがテレビでは見せないリラックスした雰囲気で語ったりするのもラジオならではという気がします。
最近、有名人が自身の結婚をラジオで報告したりするのもこの効果が大きいかもしれません。

そんな身近なラジオは、語り手がまるで自分ひとりに話しかけてくれているような錯覚に陥ったり、有名人の対談なのに、自分もその雑談に加わってるような感覚になったり、姿形が見えない分、ただ黙って聞いていても横で誰かが話しているような、あるいは友達と電話しているような感覚に近くて、単調な仕事や孤独な作業でもラジオがあれば寂しくありません。
むしろ、ラジオと一緒の「ながら」作業は捗る気さえします。

生放送も多いラジオですが、それゆえ日常に溶け込みやすく、タイムテーブルがしっかりしているので、「ながら」作業だけでなく、「すきま時間」のおともにも持ってこいです。
長寿番組も多く、そのせいか久しぶりでしたが時間の空白を感じず、すんなり聞くことができました。
例えば、番組のこのコーナーの後はこのCMという具合に、番組ごとに流れるコマーシャルが結構決まっていたり、ジングル(番組の節目に流れる短い音楽)も番組が続いている限り、めったに変わらないので、いつ聞いても時間が一定に流れていて、気持ちを落ち着かせてくれます。
テレビも常習性はありますが、ラジオはほぼ習慣のものだと思うので、決まってこの時間にここの局のこの番組を聞くという「固定客」は結構おられるでしょう。

冒頭に触れた映画は、ラジオドラマの舞台裏が題材ですが、ラジオドラマといえば、先月まで放送されていた朝ドラ『おちょやん』でも、物語の終盤は、ラジオドラマで活躍する主人公の姿が描かれていました。
モデルは喜劇女優・浪花千栄子。『お父さんはお人好し』を覚えているという方も居られることと思います。
私はというと『あ、安部礼司~BEYOND THE AVERAGE~』がお気に入りです。
日曜17時からの1時間番組で、2006年から始まり15年続く人気ラジオドラマです。
お察しのとおり、平均(アベレージ)的なサラリーマン安部さんの日常をコミカルに綴ったもので、番組のナレーションがその特徴を端的に表しています。
~この物語は、ごくごく普通であくまで平均的な49歳の安部礼司がトレンドの荒波に揉まれる姿と、それでも前向きに生きる姿を描いた勇気と成長のコメディである。日曜の黄昏時、若さと渋さの間で揺れる昭和生まれのアナタに贈る『鼻歌みたいな応援歌』を、ツボな選曲とともにお楽しみ下さい!~

番組開始当初は、「ナイスサーティーズのあなたに」と謳っていたのに、いつしか「昭和生まれのあなたに」に変わり、34歳だった安部さんも今や49歳。
時の流れを感じつつも、相変わらずのラジオの中の安部さんたちにほっこりして、たっぷり「ラジオの時間」に浸りました。

昭和芸能デスク