遅延損害金の約定利率が年14.6%なのは何故か

<ポイント>
◆法定利率は2020年4月1日以降変更された
◆変更前が5%(商事法定利率は6%)、変更後は3%
◆約定利率は14.6%と定められることが最も多い

 

実務上、契約書において、遅延損害金の約定利率が年14.6%と定められていることが多いです。そのため、契約書のチェックをしていると、依頼者から「この年14.6%というのはどこから出てきた数字ですか。」という質問を受けることがよくあります。依頼者からすると、契約締結の段階で遅延するつもりは毛頭ないものの、法令と乖離がある数値なのか、乖離があるとすればその理由は何なのかが気になるようです。そこで、以下では、この14.6%という約定利率について解説します。
まず、約定利率の前に、法定利率がどのような定めになっているかを確認しておきます。法定利率は、2020年4月1日施行の民法改正により数値に変動がありました。当該改正前は、法定利率は5%(ただし、商行為に関する法定利率は6%(商事法定利率))でした。当該改正により利率が引き下げられ、法定利率は3%となりました(商事法定利率は廃止)。この3%の法定利率は3年毎に改定があり得るとされていますが、現時点では改定されていません。
このように考えると、14.6%という約定利率は法定利率とある程度乖離のある数値といえます。しかしながら、冒頭述べたとおり、約定利率14.6%は、私の知る限り契約書において最も頻繁に使用されている割合です。それでは、何故、14.6%という割合が普及したのでしょうか。私の推測も含まれているため、誤りがあるかもしれませんが、普及の経緯は以下のとおりです。
年14.6%という利率の基になったのは、日歩(ひぶ。元金に対して1日あたりに発生する利息額を表す)4銭と言われています。日歩4銭に365日を乗じると、14.6%となります。それでは、この日歩4銭がどこから出てきた数値かというと、国税庁のHPに次の記載がありました。
「延滞税の前身となる制度について概略を述べると、まず延滞金の制度が明治44年に設けられたが、その内容は、国税を滞納し、督促を受けたが、なおその指定期限までに完納されない場合に、その納期限の翌日から税金完納又は財産差押えの日の前日までの期間について日歩3銭の割合により徴収するものであった。その後、昭和19年4月に、この延滞金の負担割合が日歩4銭に引き上げられた。」
はっきりとは分かりませんが、この延滞金の引き上げが、年率14.6%普及の一因となっているように思われます。いずれにせよ、年率14.6%は契約条項において一般的な割合であり、無効となるような不当な割合でもありません。