相手方の所在がわからない場合でも裁判をすることはできるのか

<ポイント>
◆訴訟提起の際に提出する訴状には当事者の氏名及び住所の記載が必要
◆審理の開始には訴状が相手方に送達されることが必要
◆訴状が通常の方法で相手方に送達できない場合には、「付郵便送達」や「公示送達」によることが可能

 

訴訟を提起するには、裁判所に訴状を提出する必要があります。
訴状には当事者を記載しなければならず、当事者の特定のために氏名及び住所を記載するのが原則です。
相手方の住所がわからない場合には、弁護士は、職務上請求で相手方の住民票を取得したり、弁護士会照会で携帯電話番号から住所を調べたりすることができます。

さらに、審理を始めるためには、訴状が相手方に送達される必要があります。
通常、送達は交付送達という方法で行われ、相手方住所宛てに特別送達という郵便で送付されることが一般的です。特別送達では、郵便配達員が相手方に直接手渡しする必要があり、相手方が居留守を使ったり不在票に対応しなかったりした場合には、訴状の送達が完了しないことがあります。
なお、相手方の住所等に送達ができなかった場合には、休日に送達することや勤務先に送達することも可能です。

交付送達ができない場合の送達方法として、書留郵便によって発送する付郵便送達があります。付郵便送達では、相手方の受領の有無や時期にかかわらず、発送のときに送達が完了したものとみなされます。
実務上、裁判所に付郵便送達を行ってもらうためには、相手方が訴状の送達場所に居住していることを調査によって確認し、裁判所に調査報告書や上申書を提出する必要があります。
具体的な調査の内容としては、実際に相手方の住所地等に行き、訪問への反応、電気・水道・ガスメーターの作動状況、郵便受けの状況、生活感の有無(部屋の電気、窓、洗濯物など)を確認したり、近隣住民から聞き取りを行ったりすることになります。

さらに、上記のような調査を尽くしても、相手方の所在がわからない場合には、その旨の調査報告書及び上申書を提出し、公示送達を申し立てることができます。公示送達においては、出頭すれば送達すべき書類をいつでも交付する旨を裁判所の掲示場に掲示し、掲示の日から2週間を経過したとき(2回目以降の公示送達は掲示の日の翌日)に送達の効力が生じます。

以上のように、相手方の所在がわからない場合でも訴訟を提起し、審理を進めることは可能です。しかし、付郵便送達や公示送達は、相手方に与える不利益の程度が大きく、裁判所も慎重な判断を行いますので、居住の有無等をきちんと調査し、資料と共に調査結果を報告する必要があります。
また、訴訟提起によって、相手方が裁判所に出頭した場合には、裁判所の関与の下、実効的な和解の交渉ができるという効果がありますが、公示送達によると、相手方が出頭したり書面を提出したりすることはほとんどないまま判決となるため、そのような効果を期待することができません。
最終的な権利の実現のためにどのような方法で進めるのがよいのかということも含め、ぜひ一度ご相談いただければと思います。