<ポイント>
◆離婚時に養育費の取り決めをしていなくても法定養育費として子一人につき月額2万円が請求できるようになる
◆法定養育費は、離婚日から、①養育費の取り決め、②養育費の審判の確定、③子の成年(18歳)までのいずれか早い日まで発生する
◆法定養育費が請求できるのは2026年4月1日以降に離婚した場合に限る
2024年5月17日に父母の離婚後の子の養育に関して改正民法が成立し、法定養育費の制度が新設されました。この改正民法は、同月24日に公布され、2026年4月1日に施行されることになっています。
養育費とは、離婚後の子の養育に必要な費用であり、具体的には、子の衣食住の費用、教育費、医療費などが含まれます。子を監護している親は、他方の親から養育費を受け取ることができます。
ただし、改正前の民法では、父母の協議や調停などの家庭裁判所の手続により養育費の額を取り決めなければ、養育費を請求することができませんでした。
今回の法定養育費制度の新設により、離婚時に養育費の取り決めをしていなくても、子一人につき月額2万円の「法定養育費」を請求することができるようになります。
法定養育費は離婚の日から発生し、次のいずれか早い日まで発生し続け、毎月月末に請求することができます。1か月に満たない部分は日割計算することになっています。
①父母が協議により養育費の取り決めをしたとき
②養育費の審判が確定したとき
③子が成年(18歳)に達したとき
なお、法定養育費が請求できるのは、2026年4月1日以降に離婚した場合に限られます。同日以降に離婚した場合は、離婚した日にさかのぼって請求することができます。
逆に、支払義務者が、支払能力を欠くために支払ができないこと、または、支払をすることによって生活が著しく窮迫することを証明した場合は、法定養育費の全部または一部の支払を拒むことができます。また、家庭裁判所は、支払義務者の支払能力を考慮して、法定養育費の全部または一部の免除や支払猶予などを命ずることができるとされています。
養育費が子一人につき月額2万円というのは安すぎるようにも思われますが、法定養育費は、取り決めがなされるまでの暫定的・補充的なものと説明されています。法定養育費制度の新設後も、それぞれの家庭の事情を踏まえて適正な額の養育費を受け取るためには、協議や調停などで養育費を取り決めることが依然として必要です。離婚時は当事者間で冷静に話し合うことが困難な場合も多くあると思われますので、ぜひ一度弁護士にご相談されることをお勧めします。
