<ポイント>
◆導入推進決議は法的には必要とされていないが、この決議がなされると、その後は導入に向けて候補者との間で詳細を検討しやすくなる
◆管理者の組合員要件を外す、理事会を廃止するなどの規約改正が必要な場合がある
前回に引き続き、区分所有者以外の者(外部専門家や管理業者など)が管理者となる「外部管理者方式」のうち
〇「理事・監事」外部専門家型または「理事長」外部専門家型
理事会あり 理事長=管理者 外部専門家が役員(理事長を含む)に就任
〇外部管理者・総会監督型
理事会なし=理事・理事長不在 外部専門家が管理者に就任
についてみていきたいと思います。
(マンション標準管理規約(単棟型)の別添1のほか、国土交通省作成の令和6年6月改訂「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」が参考になります(以下「令和6年6月改訂ガイドライン」といいます)。
前回は、外部管理者方式のメリット・デメリットを考慮したうえで、導入する必要があると判断された場合には、組合員(=区分所有者)に向けて説明会を開いたりアンケートをとったりしながら当該マンションの管理状況や外部管理者方式を導入する必要性、メリット・デメリットについて情報共有しつつ、組合員の意向を把握し、合意形成していくこと、
そのうえで、総会で導入推進決議をおこなうなどして、
・候補者の選定
・契約書
・報酬等の予算
・外部専門家の選任手続等に関する細則
・管理規約において組合員のうちから役員を選任することとなっている場合における、組合員以外の者から管理者を選任できる旨とする規約改正案など
を検討し、総会決議で正式に決定すること
が考えられることをお話ししました。
上述した組合員(=区分所有者)に対する説明会は、理事会主導で行われると考えられますが、外部管理者方式を採用すると管理方式に大きな影響があるので(特に外部管理者・総会監督型では理事会が廃止される)、理事会からの求めに応じて外部専門家も説明会に出席し、少なくとも次の項目について説明がなされるのが望ましいとされています(各項目の詳細は<令和6年6月改訂ガイドライン>が参考になります)。
1.管理者の権限の範囲
2.通帳・印鑑の保管方法
3.外部専門家が管理者の地位を離れる際のプロセス
4.日常の管理での利益相反取引等におけるプロセスや情報開示の方法
5.大規模修繕工事等におけるプロセスや情報開示の方法
6.監事の設置と監査の方法
7.その他重要事項
次に、導入推進決議についてお話します。
上述した、外部管理者方式の導入推進決議では、外部管理者方式の導入に向けて具体的な手続を進めていく旨、候補者、新たな管理方式や管理者の権限等の大きな方向性、スケジュール等を明示して、決議を得ることが考えられます(管理規約において組合員が管理者になるための要件となっている場合には組合員以外の者から管理者を選任できるとする規約改正を、この導入推進決議で、または最終的な導入決議で行うこと
が考えられます)。
この導入推進決議は、法的に必要とされているわけではありませんが、これが決議されれば導入の方向性が確認されたことになるので、その後は導入に向けて候補者との間で詳細を検討し、つめていきやすくなります。
最後に、導入決議についてお話します。
外部管理者方式を正式に導入するには、たとえば次の総会決議が必要と考えられます。
・候補者である外部専門家を管理者に選任する案
・規約及び細則の制定・改正案
・管理者との間の管理者業務委託契約書の案
・管理者の報酬に関する予算案
なお、組合員以外の者から管理者を選任できる旨の規約改正を、必要に応じて行うほか、外部管理者方式の中でも外部管理者・総会監督型を導入する場合には、理事がいなくなり、理事会が廃止されるので、この点でも多くのマンションでは規約改正が必要と考えられます。
参考になれば幸いです。