マンション等における近隣住民との騒音トラブル
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<ポイント>

◆騒音が受忍限度を超える場合には損害賠償請求や差止請求が可能
◆騒音を記録することが必要

 

私達が日常生活を送る上で生活音が発生することは避けられませんが、やはり他人の発する音は気になるものです。特にマンション等の集合住宅にお住まいの方は、近隣住民の発する騒音に悩まされた経験のある方も少なくないのではないでしょうか。

近隣住民の発する騒音でお悩みの場合、まずは、管理会社や管理組合、自治会や町内会、各地方自治体の相談窓口に相談することが一般的かと思います。それでも改善が見られない場合、警察に通報・相談することも選択肢の一つです。警察から注意をしても騒音が改善されなければ軽犯罪法違反に該当する可能性もあります。

騒音トラブルで弁護士にご相談いただいた場合、まずは騒音を発生させる者に書面(場合によっては内容証明郵便)を送付して交渉を試み、それでも改善されない場合には、調停を申し立てる、訴訟を提起する、などの裁判手続に進むことが考えられます。
一口に騒音と言っても、人間が日常生活を営む上で生活音が発生することは避けられないことから、騒音が受忍限度を超えている場合にのみ、不法行為に基づく損害賠償請求や騒音の差止請求が認められる、という受忍限度論が裁判上は概ね確立した考え方となっています。
「受忍限度」とは、簡単に言うと、「社会生活上我慢できる範囲」のことをいいます。この受忍限度について判断する際には、①加害行為の性質・程度、②被害(被侵害利益)の内容・態様・程度、③加害行為の社会的有用性、④地域性・環境、⑤先住関係、⑥規制基準違反の有無、⑦加害の回避行為(防止措置)及び交渉経緯、⑧被害者側の事情(位置関係、生活状況)、⑨加害者の主観の内容、などが考慮要素とされます。

上述したとおり、騒音が受忍限度を超えるか否かについては、騒音の程度以外にも判断要素が多数ありますが、騒音の程度を検討するにあたっては、環境省の発表している騒音に係る環境基準や各地方自治体の条例における規制基準が参考になります。
なお、騒音が最大41デシベルの歌声で、当地の環境条例の規制基準を超えるものではなかったものの、生活音とは異質な音であること、深夜にも発生していたことなどを考慮して、受忍限度を超えると判断した裁判例もあり、注目に値します(東京地裁平成26年3月25日判決)。

騒音の記録については、市販の騒音計を室内で騒音のする方向に近づければある程度の正確性で騒音を測定することが可能ですが、裁判手続での証拠提出まで見据えるのであれば、専門の測定業者に依頼するのが確実でしょう。
必ずしも裁判手続まではお考えでない場合も、ご相談の際には、騒音の発生日時等のメモや、お手持ちのスマホでの録画や録音など、騒音の発生状況が客観的にわかる資料がございますとご相談に乗りやすいかと思います。