JR北海道のレール異常放置問題から学ぶこと

 木ノ島 雄介

2014年04月01日

<ポイント>
◆脱線事故からレール異常放置が発覚したこと
◆完成度の高い内部通報制度が機能不全であったこと
◆経営トップ自身が制度の意義を説明し続けること

平成25年9月にJR北海道の貨物列車が脱線事故を起こしたことがきっかけで、レール幅が整備基準値を越えたまま放置されていた箇所が270箇所もあったことが発覚しました。国土交通省の外局である運輸安全委員会は、レール異常の放置と脱線事故との因果関係を認める調査結果を報告しています。

レール異常の放置などの原因として、複数の労働組合同士が対立していて社内で連携ができていないのではないかという報道がなされています。
他方で、レールの検査データが改ざんされている疑いを労働組合が1998年に指摘し、これを受けて会社側が現場責任者から聴き取りをしたが、改ざんを裏づける証言が得られないまま内部調査を打ち切ったという報道もなされています。これが事実であれば、この時にもっと踏み込んで調査を行い、改ざんの再発防止まですることができれば、270箇所も放置するなどという問題は起こらなかったのではないかと考えられます。

内部通報制度との関連でいえば、平成25年2月5日に札幌市で消費者庁が公益通報者保護法説明会を主催し、その中でJR北海道総務部の担当者が内部通報制度について講演しています。その時の配布資料をインターネットで閲覧することができます。
http://www.caa.go.jp/seikatsu/koueki/shuchi-koho/pdf/130313_4.pdf
この配付資料をみて驚くことは、上述の不祥事が起こったことが信じられないほどJR北海道は完成度の高い内部通報制度を構築していたことです。「自浄作用」を発揮して早期発見・早期解決を図ることの重要性が書かれています。
また、平成21年9月の時点において、JR北海道の社員は総務部法務グループの社内窓口または社外窓口(法律事務所)に通報でき、グループ会社の社員は自社の社内窓口、JR北海道総務部法務グループの社内窓口、社外窓口の3つの窓口に通報できるようになっています。
そして、企業行動上不適切な事柄を通報対象としつつ、内部通報制度を「通常の業務ライン」で自浄作用ができないときの補完的制度と位置づけ、まずは職場内での解決を推奨しています。
さらに、匿名通報は原則として受け付けないが社外窓口から会社に通報内容を連絡する際には通報者の氏名を伝えないとすることで、無関係な第三者が社員になりすますおそれがあるという匿名通報の問題点をクリアしつつ内部通報制度を利用しやすくしています。通報者に対する不利益取り扱いを禁じ、窓口担当者に守秘義務を課してもいます。

このように完成度の高い内部通報制度が構築されているにもかかわらず、仮にレール異常や検査データ改ざんに関して社員の誰からも通報がなされなかったとすれば、非常に残念であり、他山の石とすべきことがあるのではないかと思います。
社員の誰からも通報がなされなかったとすれば、内部通報制度が社内に浸透しなかったということなのでしょうが、経営トップによる内部通報制度の積極的活用を促すメッセージが足らなかったのではないかと思われます。内部通報制度が成功する鍵を握るのは社員です。社員に内部通報制度の意義・重要性を理解してもらわなければなりません。
そして真に社員に重要性を認識してもらうためには、経営トップが自らの声で社員に内部通報制度の意義・重要性を何度でも説明し、不利益取扱いから断固として守ること、内部通報を行うのは義務であることを明確に伝えるべきです。JR北海道にも多くの誠実な社員がいるはずです。内部通報制度自体の完成度は高いので、不利益取扱いから守ること、経営トップが義務であることを明確に伝え続ければ、これに呼応し、レール異常放置や検査データ改ざんについて誠実な社員から通報がなされた可能性はあったと思います。