私製手形による取立ては許されません

 梅本 弘

2004年06月15日

高金利と強引な取立てで非難が高まっていた旧商工ファンド(現社名SFCG、以下「SF」といいます。)は、貸付けに当たり、普通の手形用紙ではない私製の手形用紙を用いて債務者に手形を発行させていました。
通常、手形といえば、当座預金口座をもっていることを前提に銀行から交付してもらう統一様式の手形用紙を用います。しかし、多くの債務者はそのような手形用紙を銀行からもらえることはないので、SFはいわゆる「私製手形」の用紙を自分で作り、これを債務者に渡して、借入金に見合う手形を振り出させていたのです。このような手形を通称「おもちゃ手形」と呼びます。
私製手形も法律上は有効な手形です。「手形法」には統一用紙でなくてはいけないとは規定されていません。極端に言えば、レポート用紙に書かれたものでも、金額、支払期日など、手形の必要事項が漏れなく書き込まれたものなら法律上は「手形」なのです。
もっとも、そのような手形は、銀行で割引を受けられないのはもちろん、普通の手形のように流通させることもできません。にもかかわらず、SFが貸付けに当たって債務者にこういう手形を書かせるのはそれなりの理由と目的があります。(通常の手形用紙を
債権者(SF)は、貸付けの相手方(債務者)が返済しない場合、本人や保証人に対し強制執行(差押え)を行いますが、そのときに手元に手形があることが好都合なのです。
強制執行を行うに当たっては、債務名義(債務が確かに存在し、その返済期限が到来しているのに返済を怠っていることを証明する書類)が必要です。これを入手するためには、通常、債権者側が貸金返還訴訟を起こし、債権者勝訴の判決を得ることが必要です。ところが、その訴訟を起こす際、手形が手元にあれば「手形訴訟」という通常の貸金返還請求訴訟に比べてはるかに簡便で、すぐに判決が下りる手続を選ぶことができるのです。
SFは私製手形をもってこの「手形訴訟」を提起して簡単に債務名義を取得し、それによって大量の強制執行を行っていたのです。
平成10年の1年間、SFは、東京地裁で手形訴訟を担当する民事7部の手形訴訟の実に6割に当たる1650件の訴訟を起こしました。東京地裁から自粛要請を受けたあとは、東京を避けて全国各地の裁判所に同様の訴訟を提起するようになりました。
このような背景があって、東京地裁は平成15年11月17日、次のように述べてこの私製手形で債務名義を取る方法を不適法とする判決を下しました。
「SFの行為は、手形訴訟により債務者・保証人らの抗弁を封じ、簡易迅速に債務名義を取得して強制執行手続きをすることを目的にしており、(中略)手形訴訟制度を悪用したものとして不適法である。」