消費者契約法及び消費者裁判手続特例法の改正について(その1)
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<ポイント>
◆免責の範囲が不明確な契約条項は無効になった
◆いわゆる困惑類型が追加された

消費者契約法及び消費者裁判手続特例法の改正が令和4年5月25日に成立し、同年6月1日に公布されました。本改正は、消費者を対象とする事業を営む企業にとって対応を要する事項を含みますので、本稿から2回に分けて解説させていただきます。
なお、本改正は、令和5年6月1日に施行されます。ただし、適格消費者団体の事務に関する改正規程及び消費者裁判手続特例法に関する改正については、公布の日から起算して1年半を超えない範囲(令和5年12月1日まで)で、政令により定める日に施行されます。

1 免責の範囲が不明確な条項の無効
現行の消費者契約法においては、故意または重大な過失に基づく債務不履行及び不法行為に基づく事業者の損害賠償責任の一部を免除する契約条項を無効とするルールがあります(法第8条1項2号、4号)。
現行法下では、このルールを遵守しているものの、いかなる場合に事業者が免責されるのかが不明確な契約条項が存在していました。例えば、「法令に反しない限り、1万円を上限として消費者の損害を賠償します」という契約条項の場合、「法令に反しない限り」という制限が付いているので上記のルールには違反していませんが、事業者が免責される範囲が不明確といえます。本改正においてこのような条項は、消費者の損害賠償請求を困難ならしめるものであり、制限されるべきとされました。
その結果、本改正により、事業者の消費者に対する損害賠償責任の一部を免除する条項について、事業者の重大な過失を除く過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていないものは無効とすることが定められました。
したがって、改正後は、「法令に反しない限り、1万円を上限として消費者の損害を賠償します」というような条項は無効となります。このような条項は、「事業者が軽過失の場合は1万円を上限として消費者の損害を賠償します」というような文言に改める必要があります。

2 困惑類型の追加
 現行法下では、事業者が契約の締結について消費者を勧誘する際に、消費者に対して法律の定める一定の行為をしたことにより消費者が困惑し、それによって契約を締結した場合には、消費者から当該契約を取り消すことができるとされています(いわゆる困惑類型)。
本改正によって、この一定の行為が追加され、
・勧誘をすることを告げずに、退去困難な場所へ同行し勧誘する行為
・威迫する言動を交え、相談の連絡を妨害する行為
・契約前に目的物の現状を変更し、原状回復を著しく困難にする行為
により消費者が困惑し、契約を締結した場合にも、消費者から契約を取り消すことができるようになりました。