内部通報制度に関する規程(その3)

 梅本 弘

2014年03月01日

<ポイント>
◆事実調査は「内部通報事務局」が立案し、独自にまたは他部署・他機関に委嘱して行う
◆調査結果は法律判断を含め、事務局から然るべき部署または役職者に報告される
◆通報者の保護義務、関係者の調査協力義務・守秘義務等を明記しておく

11 通報内容に関する事実調査

通報内容に関する事実調査は、まず「内部通報事務局」によってその方法が検討され、準備が開始されます。
「内部通報事務局」とは、これまで「社内窓口」と言ってきた同じ部署で、多くの場合法務部門内に置かれています。そして、通報の受理まではその「社内窓口」として機能し、受理後は通報内容に関する事実調査や是正措置等に際しその事務局的機能を担当することになります。
これと異なる仕組みも考えられますが。

内部通報事務局(以下単に「事務局」と言います)は、通報内容が比較的軽微であると判断されるときは、その調査の方法や聞き取り調査の担当者・対象者などを自ら立案し、かつ調査を実行します。問題部署の管理職等に調査を委嘱することもあります。
しかし、通報内容が会社にとってきわめて重大なものであり、あるいは重大なものに発展する危険性があると判断されるときは、事務局が独自で事実調査を開始することは適当でありません。まず上位機関または担当役員等に報告し、その指示を仰ぐことが必要です。
場合によっては、早くもこの段階で「コンプライアンス委員会」等が開催され、調査方法を含め以後の方針などが検討、審議されることがあり、その結果、横断的な調査委員会が編成されたり、第三者委員会に調査が委嘱されたりすることもあります。

事実調査は通常、問題部署の周辺に、内部通報に基づく調査が行われていることが知られないように進めます。
また、通報者や被通報者が特定されないように注意を払いながら進めます。しかし、通報者に対し「絶対わからないように進めます」などと保証することはできません。

以上の事情を考慮したうえ、規程としては例えば次のように表現することになります。
「内部通報事務局が内部通報を受理したときは(社外窓口から連絡を受けた場合を含む)、速やかに通報内容に関する事実調査に着手する。但し、通報内容が会社にとって重大であると判断されるときは、まず上位機関または担当役員等の指示を仰ぐものとする。」
「事実調査は、場合により、調査委員会または第三者委員会に委嘱されることがある。」
「聞き取り調査等については、適当と判断される役職者にそれを委嘱することができる。」
「調査に当たっては、その周辺に通報者や被通報者が知られないように最大限の注意を払わなければならない。但し、通報者や被通報者に関する推測や噂が流布しないことまで保証するものではない。」
「内部通報事務局は調査の経過について適宜通報者に連絡するものとする。」

12 調査結果の報告

調査が終了したときは、その結果について、事務局からコンプライアンス部門の責任者をはじめ、ルールに従って社内の関係部署に報告がなされます。
軽微な案件で通報受理時に報告を行っていなかった場合は、通報受理の経過及び通報内容も合わせて報告されます。
その際、問題事象に関する単なる事実認定の報告だけでなく、違法性・妥当性の判断についても意見も上申することになります。従って、その判断が困難なときは事前に弁護士等の意見を徴しておく必要があります。
この報告に対しさらなる調査の指示があれば、事務局としてそれにも対応することになります。
ところで、これらの報告に当たっては、通報者が特定できるような情報(氏名、連絡先等)は原則として開示しません。経営幹部に対しても同様です。経営幹部と言えども通常通報者に関する情報は必要がないうえ、通報者が不当な批判を受けたり不利益な扱い受ける危険につながるおそれがあるからです。オリンパスの事例を参照してください。
調査結果はまた、通報者に対するフィードバックとして、通報者にも報告されます。社外窓口(弁護士)が受理した通報の場合は、その弁護士を経由して報告することになります。

規程の例文としては、以上すべてにわたって表現する必要はなく、例えば、次のような記載になります。
「調査が終了したときは、内部通報事務局から〇〇部部長(または〇〇担当役員)に対し、その結果を報告する。但し、通報者の氏名等、通報者が特定できる情報は通報者の同意がないかぎり原則として開示しない。」
「通報者に対しても同様の報告を行う。社外窓口(弁護士)を経由した通報の場合はその弁護士を通じて報告する。」

13 是正措置の実行、再発防止策の策定、対外的公表

調査の結論が出てその報告等が完了すれば、次に、関係者の処分、組織の変更、人事の異動、業務マニュアルの見直しなど、いわゆる「是正措置」および「再発防止策」が決定されます。また、必要と判断される場合は対外的公表等も行われます。
但し、この段階は会社としての業務執行の範疇であり、経営トップが判断したり、その前提として「コンプライアンス委員会」等が持たれたりするので、事務局が主導的役割を果たす場面ではありません。
もっとも、軽微な問題については、事務局と問題部署の管理職とが協議して現場的に解決できる場合(部署内解決に近くなる)も少なくないと思われます。その場合でも、内部通報の処理の経過として記録には残しておくべきです。
規程の例文としては、
「調査の結果、不正行為等があったと認められた場合は、会社として速やかにその是正措置及び再発防止策を講じるとともに、必要に応じて関係者の処分及び外部に対する公表を行う。」

14 通報者の保護

以上の項目は、内部通報の受理から是正措置まで一連の手続に関するもの(言わば「手続規定」)でしたが、章をあらためて(例えば、「当事者の責務」等として)、これらの過程において各関係者が遵守しなければならない事項をまとめて記載しておくことも意義があります。
その一つは「通報者の保護義務」です。これは、通報者側の義務ではなく、会社として遵守すべき義務です。
例文としては、
「会社は、通報者が内部通報を行ったことによりいかなる不利益も受けることのないよう配慮する義務を負う。会社として通報者に対し不利益取扱いをしないことはもちろん、通報者が職場において不当な批判や嫌がらせを受けることのないよう配慮しなければならない。」
また、まだ一般的なルールとはなっていませんが、内部通報を促すための政策的配慮として次のような規程例もあります。
「内部通報の内容に通報者自身も関与しており、通報に自白的要素が認められる場合は、処分等の際それを通報者に有利な事情として斟酌することができる。」
いわゆる「リーニエンシー」(自主申告による責任の減免制度)の考え方です。

15 調査協力義務

例文としては、
「内部通報に基づく事実調査のため協力を求められた部署や関係者はその調査に協力しなければならない。」

16 守秘義務

例文としては、
「内部通報事務局、調査の対象となった部署、調査に協力した部署、その他関係部署の関係者を含め内部通報に関する情報を知った者は正当な理由なくその情報を他に漏洩してはならない。」

17 付則

付則として記載すべき事項には次のようなものがあります。
社外窓口(弁護士)の具体的氏名、住所、メールアドレス、プロフィール等
規程の施行日
規程が改正される場合の方法、手順
規程やその変更を社員等に告知、周知する方法
規程の主管部署