住宅の品質確保の促進等に関する法律について

 嶋津 裕介

2000年07月05日

【法律制定の経緯】
住宅は一般の消費者にとって一生のうちで最も高価な買い物の一つでしょう。
消費者は住宅購入を決心すると、どのような住宅が自分たちの希望に適うのか、チラシに目を通し、各住宅メーカーに足を運んで説明を受けます。
しかし、今まで各住宅メーカーの説明に統一的な基準がなかったので、消費者にとって各社の住宅の品質を比較検討することは困難でした。
住宅の「品質」自体を評価する第三者機関もありませんでした。
また、近年いわゆる欠陥住宅に関する問題がマスコミでもクローズアップされています。
購入した住宅に欠陥があった場合の保証について、民法だけでは不十分であるとの意見が強く主張されていました。
また、欠陥についての紛争に関して、訴訟以外の紛争処理方法が模索されていました。
このような経緯から「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が制定されました。
平成11年6月15日成立、同月23日交付、平成12年4月1日から施行されています。

【法律のポイント】
この法律のポイントは次の3点です。
(1)新築住宅の保証期間を10年間とする。
(2)住宅性能表示制度の創設
(3)住宅紛争処理体制の整備
これらによって、住宅の品質向上を促し、住宅購入者の利益を保護し、住宅に関する紛争を迅速・適正に解決することをめざしています。
ところで、この法律は二段構えになっています。
(1)の瑕疵担保責任に関する条文はすべての新築住宅を対象としていますが、(2)、(3)の制度を利用するかどうかは住宅購入者やメーカーが自由に決めることができます。
(2)、(3)を利用するには住宅購入者が評価料を最終的には負担しなければならないからです。
住宅購入者がその負担をしてもいいから品質について評価済みの住宅をほしい、あるいはメーカーが顧客に負担をさせてもいいから評価済みの住宅を提供したいと考えた場合のみ、(2)、(3)の制度が利用されます。

【欠陥保証責任(瑕疵担保責任)】
新築住宅の基礎構造部分の欠陥については、その保証期間が10年になります。
注文住宅の場合(請負人の責任)、建売り住宅・分譲マンションの場合(売主の責任)を含みます。
新築の場合に限られ、増築や改築の場合は適用されません。中古住宅の売買の場合も含まれません。
10年という保証期間は当事者同士の合意でも短縮することができません。逆に20年以内で延長することができます。
基本構造部分とは、基礎、柱、床、屋根など「構造耐力上主要な部分」と、下地、サッシなど「雨水の浸入を防止する部分」を言います。

【保証の内容】
欠陥を補修するよう請求できます(補修請求)。補修請求に代えて、損害賠償請求もできます。
ただし、補修に過分の費用がかかる場合は損害賠償請求のみが認められます。
建売住宅の場合は、このほか、とても使用できない住宅であるような場合は、売買契約を解除することができます。
なお、顧客とメーカーとの間で、これらに反する特約で顧客に不利なものを定めても、それは法律上無効と扱われます。

【住宅性能表示制度】
新築建物の取得者は、希望すれば、住宅の性能表示に関する基準に基づいた評価を受けることができます。
具体的には、契約の締結前に、「指定住宅性能評価機関」に住宅性能評価を行うことを申し入れ、「住宅性能評価書」の交付を受けます。
「指定住宅性能評価機関」は建設大臣から指定、監督を受ける第三者的な民間機関です。
メーカーが「住宅性能評価書」を契約書に添付したり、顧客に交付した場合は、その評価書の内容が顧客とメーカーとの契約内容になります。
顧客側としては、こうしておくことにより、もし性能評価書の内容を下回っていた場合、契約違反を理由として欠陥の補修や損害賠償を請求することができるという利点があります。
ただし、前述したように、顧客がこれらの評価を受けるには、10~20万円程度の評価料を負担しなければなりません。

【紛争処理体制】
住宅性能評価書が交付された住宅(評価住宅)にはさらに利点があります。
欠陥の有無、損害賠償などで紛争が生じた場合、顧客は「指定住宅紛争処理機関」という機関に申し立て、あっせん、調停および仲裁などの紛争処理を受けることができます。
この指定住宅紛争処理機関は各地の弁護士会の中に設置されることになっています(大阪弁護士会は平成12年9月1日設置予定)。
評価住宅については、評価・検査時の資料や設計図書などの資料が保存され、また住宅性能評価書が契約内容になっている場合もありますので、通常の裁判より解決がしやすくなることが期待されています。
紛争処理機関を利用する場合の手数料も1~2万円と安価に設定される見込みです。
紛争処理機関においては、弁護士のほか、建築の専門家が紛争処理委員として選任され、あっせん、調停、仲裁などにあたります。
紛争処理機関のほかに「紛争処理支援センター」も設置されます。これは、紛争処理機関をバックアップするほか、評価住宅以外の住宅取得者からも相談や苦情を受け付けることとなっています。

【言葉の説明】
「あっせん」 紛争が当事者の妥協によって自主的に解決されるように助言調整すること
「調停」 第三者の仲介によって紛争当事者が互いに話し合い、和解(示談)成立のために努力すること
「仲裁」 双方当事者があらかじめ指定紛争住宅処理機関に解決を任せることを合意(仲裁契約)し、その判断に従うことによって紛争解決すること
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