不祥事発覚時の危機対応をみて思うこと

 森田 豪

2014年03月15日

<ポイント>
◆不祥事発覚時の対応を誤るとそれが「二次不祥事」となる
◆不祥事発覚時こそ「自浄作用」が問われる

昨年(2013年)も多くの企業不祥事が話題になりましたが、みずほフィナンシャルグループ(暴力団関係者への融資)、阪急阪神ホテルズ(食品偽装表示)、カネボウ化粧品(化粧品による白斑被害)のケースはとくに大きくとりあげられました。
これらの3ケースでは発覚時の企業側の初動対応のまずさが問題をさらに巨大化させています。
カネボウ化粧品の事案ではもっと早期に公表・自主回収が可能であったこと、それがなされなかった原因がどこにあるのかといったことについては、前々回に池田弁護士が解説しています。
(内部通報に関する法律情報2014年3月1日掲載「カネボウ白斑事件から学ぶこと」参照 )

阪急阪神ホテルズ社長の記者会見をみてどのように感じたでしょうか。「偽装ではなく誤表示だ」という説明への強い批判がありましたが、会見の内容に対してよい印象をもたなかった方が多いでしょう。
なにをもって「偽装」あるいは「誤表示」とするかは人によって捉え方に違いがあります。それ自体は致し方ないことですが、見方により「偽装」と言われてもやむをえない状況にあることを素直に認めたうえで謝罪するべきだったのではないでしょうか。
社長は「故意や悪意まではなかった」あるいは「トップが指示したわけではない」ということを言いたかったものと思われます。ある種の防衛本能からでた発言とみられますが、いずれにしても自己弁護に終始しているというマイナスの印象をもたせてしまったことは確かです。
また、みずほFGは、暴力団関係者への融資について当初は「担当役員どまりでトップは知らなかった」と金融庁に報告していたところ、後に取締役会でも報告されていたことが明らかになりました。不祥事の事後対応のなから新たな不祥事を起こしてしまったのです。
両社とも経営トップの交替にまで至っています。
発覚後の対応が「二次不祥事」となりさらに問題を大きくしてしまったケースです。

この原稿を書いている現時点では降圧剤をめぐるノバルティスファーマや武田薬品のケースが今後どのように展開していくのかに注目しています。
ノバルティスは降圧剤のプロモーションで引用した「医師主導臨床研究」に同社社員が関与していたこと、同社員の所属について論文上で適切な開示がなされなかったことは認めていますが、同社員がデータ解析や改ざんに関わったことや直接的な容疑である誇大広告について認めていません。つまり内容面に関しては疑惑を否定しています。
一方で同社は、「医師主導臨床研究」であるためデータを保有しておらず事実関係を把握しきれないとも説明しています。しかし、それならばなぜ社員のデータ解析への関与を否定できるのでしょうか。刑事事件に移行するなかでどのような事実が明らかになるのか注視していきます。
また、武田薬品は誇大広告の疑いが指摘された後に社長自らが会見し、第三者委員会による調査を行うこととしました。会見では、業界団体のガイドラインへの違反はあったもののデータ改ざんはなく誇大広告でもないとの認識が示されました。
類似事案のノバルティスにくらべれば初動対応はスムーズだったという評価もみられますが、3か月程度かけて行われるという第三者委員会の調査内容がどのようなものになるか関心があります。
武田薬品は改ざんや誇大広告について否定しており、すでに社内で事実関係を把握できているという前提でこうした見解を示したと考えるのが自然です。
そうだとすれば第三者委員会設置の趣旨も、単に個別事案に関する事実関係の調査に主眼がおかれるのではなく、より根本的な原因の究明とそれをふまえた是正策の検討に重点がおかれなければいけません。
大手2社で類似する事案が同時期に問題となったように業界の体質とも指摘される問題が背景にあり、はたして第三者委員会の調査がそこまで踏みこんでいくものになるでしょうか。
第三者委員会はある種の流行のように数多く設置されていますが、情報量、時間、労力の制約から形式的な調査にとどまる場合も残念ながらみられます。「第三者委員」といっても、企業自身が依頼した委員による調査という構造自体に限界があるのではないかという指摘もあります。
最大手企業をめぐる一大不祥事に際して「第三者委員会」というものがどこまで機能を果たせるのか。「調査中」という一種の冷却期間をおくことで終わっていくのか。興味深いところです。

今回は連載のテーマである内部通報制度そのものを直接とりあげることはしていません。ただ、企業不祥事における各社の対応をみて思うのは、やはり「自浄作用」が働いているかどうかということであり、このキーワードは連載のなかでくり返し強調してきたことです。