一般社団法人を利用した保険料の削減等の方法?

<ポイント>
◆国保から社保への切り替えは許されるのか?

 

1 個人事業主・フリーランスのための国民健康保険料・社会保険料の削減方法?
個人事業主やフリーランスの保険料を削減する方法として、以下のような方法を提案する事業者がいるようです。
(1)一般社団法人の理事になる
個人事業主やフリーランスの方が自ら設立したり、既存の一般社団法人に理事として就任し、その法人から役員報酬を受け取る形にする。
(2)厚生年金・健康保険への加入
理事として報酬を受け取ることで、国民年金・国民健康保険ではなく、厚生年金・社会保険に切り替える。
(3)報酬額の設定
社会保険料は役員報酬に基づいて決まるため、報酬を最低限に設定することで保険料負担を抑える。
(4)一般社団法人への会費や加盟金の支払い
理事としての活動を仮装するために社団法人への勧誘をSNS投稿等を通じて行った体裁を作出するなどの作業を行うこともあるようです。また、毎月の会費支払いが条件としてかかるスキームを提案する事業者の収益としているようです。
2 社会保険料の節約・将来受け取る年金の増額
以上の方法によって、社会保険料の節約を実現するようです。あくまで目安ですが、年間で20万円~60万円程度の社会保険料の節約が可能なケースが多いようです。実際の節約額は所得や自治体、家族構成、報酬額設定によって異なります。
また、国民年金から厚生年金へ切り替えることにより将来受け取る年金が増額するということです。
3 問題点・リスク
(1)制度のグレーゾーンである
本来の事業目的と異なる「国民健康保険・社会保険料の削減目的」の理事就任は、監督官庁のKAKUNINを受けたり法令違反や制度改正リスクがあります。また、このようなスキームが広く知られることで、今後制度が改正され使えなくなる可能性もあります。
このとき、国民健康保険料等の支払いを免れるための「脱法行為」と判定されてしまうと、過去に遡って未払分を支払うように請求される可能性もありそうです。また、理事としての責任により、同じく理事となった者の未払い分まで責任を負わされる可能性も考慮しなければなりません。
(2)報酬設定に関するリスク
役員報酬を極端に低く設定すると、税務署から否認されるリスクや、将来の年金受給額が減る可能性があります。
(3)iDeCoなど他制度の制限
厚生年金加入により、iDeCoの掛金上限が下がるなどの副次的なデメリットも発生するようです。
4 まとめ
このスキームは、一見、社会保険料の大幅な節約と将来の年金受給額増加が期待できるように見えますが「脱法行為」とされるリスクを考えると、私個人としては、安全を見て採用しないようにアドバイスすることになります。