リハビリ出社・リハビリ出勤について

 池野 由香里

2012年02月01日

<ポイント>
◆リハビリ出社・リハビリ出勤はメンタルヘルスの場合に有用
◆合意書で賃金等について定めるべき
◆医師の意見を聴くことを忘れずに

このところ、リハビリ出社・リハビリ出勤についての相談をお受けする件数が増えてきました。

リハビリ出社・リハビリ出勤とは、うつ病などで長期間会社を休職していた人が、職場復帰に向け時間をかけて徐々に出社や出勤の時間、日数を増やし、出社や出勤に慣れていくことをいいます。
いきなり通常業務に戻る場合よりもリハビリ出社やリハビリ出勤をした場合のほうが、復職の成功率があがるといわれています。
なお、リハビリ出社とは、従業員が出社だけを行い、会社の業務は行わず、読書なり自習なりをするものです。一方、リハビリ出勤は、一定の日時、時間帯で一定の作業(軽作業が多い)に従事するものです。つまりリハビリ出勤は勤務を行っているので給与が発生し、リハビリ出社については支払う約束をしない限り給与は発生しないのが原則です。

しかし、この制度の運用については、厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」において、試し出勤制度(リハビリ出勤制度)として、「この制度の運用においては、試し出勤の人事労務管理上の位置づけについて十分に検討しておく必要がある他、この制度が職場の都合でなく労働者自身の主体的な考えや判断にもとづいて運用されるよう留意すべきである。」との記載があるのみです。
法的な規制やルールがないため、人事担当者を悩ませる場合も少なくありません。

そこで、今回はリハビリ出社・リハビリ出勤のメリットや運用する際の注意点についてご説明したいと思います。

うつ病などのメンタルヘルスの場合には、体の病気と異なり、回復したとの診断がなされても、回復したかどうかの判断が難しく、また、回復したとしても再発することも多いといえます。
また、休職している従業員からしても、いきなりフルタイムの通常勤務を行うより徐々に心身を慣らしながら職場復帰するほうがスムーズな復帰が可能となります。
そのうえ、本人があくまで治ったと主張し、主治医も本人の意向に沿う診断書を書いていても、会社側から見れば到底治ったとは思えないような場合にも、この制度は有用です。会社が実際に従業員の出社・出勤状況や言動等を見ることができ、どのように対応するのかの参考にすることもできますし、リハビリ出社・リハビリ出勤を通じて実際には治りきっておらず復職は無理な状態であることを従業員自身が気づくことができ、それにより双方の認識が共通になることで無用のトラブルを防ぐこともよくあるからです。

ただし、就業規則等で会社の制度として明文化しているのでなければ、会社としてリハビリ出社・リハビリ出勤を認めなければならないというわけではありません。

リハビリ出社・リハビリ出勤を行う際には、従業員とその内容について協議し合意書を作成したうえで行います。
合意書の内容としては、賃金の有無、額、リハビリ期間や、出社の回数・時間、業務を行うか否か、行うとすればその内容、どのような場合に通常勤務に戻しどのような場合(一定期間の出社・出勤率等で決めることが多いです。)に休職に戻すか等について記載すべきです。
また、リハビリ出勤の場合は、給与が発生しますので、給与について合意する必要があります。
できれば就業規則にリハビリ出勤の場合の給与は別途合意により定めると書いたうえで、合意書を作成するのが一番よいのですが、せめて合意書において、時間給等の定めをするべきです。通常の賃金の6から8割程度で設定される場合が多いようです。

一般に、リハビリ出社の場合、労災や通勤災害の補償の対象とならないと解されており、リハビリ出勤の場合は、勤務であるので補償の対象となると解されているようですが、この点については判例がないので、リハビリ出社の場合、勤務ではないため労災や通勤災害場合補償の対象とならない旨、合意書で明記しておくべきでしょう。

合意書の内容を決定するにあたっては主治医や産業医の意見を聴取する必要もあります。医師の意見を聴くことなく、無理なプログラムを組んでその結果病気が再発すれば、会社の安全配慮義務違反が問われる可能性もあるからです。