マンションの修繕積立金の取り崩し

 木ノ島 雄介

2012年06月15日

<ポイント>
◆取り崩しが許される場合は限定されている
◆共用部分の修繕費用は、持分に応じて負担する

東日本大震災で壊れたマンションの復旧があまり進んでいないとの報道をたびたび目にします。建設業者が不足していることのほか、階によって被害状況が異なるのに各部屋の所有者(区分所有者)全員が共用部分の修理費用を徴収されることにつき合意が得られないことが理由のようです。ここでいう共用部分とは、廊下、階段、外壁などのことです。

地震によって壊れた分譲マンションの修繕費用を捻出する方法としては、いずれも集会の決議が必要ですが、修繕積立金を取り崩す方法、または、修繕費用を特別に徴収する方法が考えられます。
例えば、国土交通省が作成したひな形であるマンション標準管理規約では、修繕積立金を取り崩すことが許されるのは、一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕に必要な場合や、不測の事故その他特別の事由により修繕が必要となった場合などに限定されています。
そして、大震災によって損壊したマンションを修繕することは、不測の事故その他特別の事由により修繕が必要となった場合にあたると考えられます。
もっとも、修繕積立金の最大の目的は、安心して住み続けるために一定年数の経過ごとに計画的に行われる大規模修繕の費用を確保することですし、毎月の修繕積立金だけでは大規模修繕の費用としては不十分であるというマンションもあるでしょうから、修繕積立金の取り崩しではなく、修繕費用を特別に徴収する方法が選ばれることもあると思います。

なお、前述したように修繕積立金の使途は限定されていることから、管理費が滞納して不足したからといって修繕積立金を取り崩すことは許されません。

冒頭で述べた、階によって被害状況が異なるのに区分所有者全員で共用部分の修繕費用を負担しなければならないことの合意が得られず、マンションの復旧が進んでいない件に話を戻します。
マンションが壊れた原因が地震であることからすると、中低層階は壊れているけれども上層階はあまり壊れておらず、中低層階の住民の方と上層階の住民の方との間で合意が得られないというケースが多いのではないかと思います(もちろん、そうでないケースもあるでしょうが。)。
区分所有法上、規約に別段の定めがない限り、共用部分の修繕費用は各区分所有者の持分に応じて全員で負担すべきと定められています。中低層階の共用部分の修繕費用であっても上層階の住民の方もその持分に応じて負担しなければならないということです。
このような結論は、中低層階の被害を修復することによってマンション全体の経済的価値を維持・向上することができ、上層階の住民の方にとっても利益になることから、合理性があると考えられます。
費用負担が重いということもあり、上層階の住民の方が反対されるのももっともだと思いますが、逆に、あまりエレベーターを使わない低層階の住民の方も、上層階の住民の方と同じく、持分にしたがって保守・点検費用等を負担し続けています。このような事実を踏まえ、時間の経過とともに上層階の住民の方の理解を得て具体的な合意が得られること、東日本大震災で壊れたマンションの復旧が進むことを願っています。