マンションの一室を転売した者の責任

 木ノ島 雄介

2013年10月01日

<ポイント>
◆中古マンション購入者も前所有者の滞納管理費について責任を負う
◆転売しても元所有者の滞納管理費についての責任を免れない(私見)

分譲マンションの一室を所有していた区分所有者が、例えば管理費を20万円滞納したままその一室を売却したときは、建物の区分所有等に関する法律8条により、管理組合は、売却した者(元の区分所有者)に対してだけでなく、購入した者に対しても20万円を請求できます。
ここでは、購入した者が、元の区分所有者の滞納管理費を支払わないまま一室を転売すれば、管理組合は、転売した者(中間取得者)にはもはや元の区分所有者の滞納管理費を請求できないのかについて、説明します。
(マンション管理費の滞納への対応一般につきましては、2012年5月1日掲載の「マンション管理費の滞納への対応」をご参照下さい。

この点について裁判所の判断は分かれています。傾向としては、昔は「購入して転売した者(中間取得者)に対しては、もはや元の区分所有者の滞納管理費は請求できない」と判断していましたが、最近は「中間取得者に対しても、元の区分所有者の滞納管理費を請求できる」と判断する例が多いです。

「中間取得者にはもはや請求できない」と判断した裁判例には、大阪地方裁判所で昭和62年6月23日に下された判決があります。
事案は、元の区分所有者、中間取得者、現在の区分所有者がいずれも管理費を滞納していたというものです。
判決の内容は、元の区分所有者には自分が滞納した分だけを負担させ、中間取得者にも自分が滞納した分だけを負担させるにとどめ、現在の区分所有者には元の区分所有者・中間取得者・自分が滞納した分全てを負担させるというものでした。
中間取得者は、元の区分所有者の滞納管理費までは支払わなくてよいという判断がなされたわけですが、その理由の主たるものは、滞納管理費は、マンション一室に対する区分所有権がその引き当て(担保)になっているが、中間取得者はその区分所有権をすでに手放してしまっている、というものでした。元の区分所有者の滞納管理費を負担すべきは、滞納した本人と現在の区分所有者であるということになります。

これに対して、最近の傾向としては、「中間取得者に対しても、元の区分所有者の滞納管理費を請求できる」という裁判例が多くみられます。例えば、大阪地方裁判所で平成21年3月12日と7月24日に下された判決があります。背景としては以下の点が考えられます。
そもそもマンション一室の購入者が元の区分所有者の滞納管理費を支払わなくてはならないとしたのは、他の区分所有者の管理費で建物全体が維持・修繕されて、購入者のものを含む区分所有権の価値が守られたといえるので、購入者にも負担させることが公平だからです。
そして、購入して転売した者(中間取得者)も、自らが一室を所有している間は他の区分所有者の管理費で自らの区分所有権の価値が守られ、その価値が、転売する際の価格に反映されているはずです。
建物の区分所有等に関する法律8条は、滞納管理費等の徴収が確実にできることを目的としたものですので、今後も「中間取得者に対しても、元の区分所有者の滞納管理費を請求できる」方向で判断されるのではないかと思います。

元の区分所有者の滞納管理費は、滞納した本人、現在の区分所有者に対してももちろん請求できるのですが、マンション一室に対する競売をするには費用と時間がかかりますので、中間取得者に資産があって回収の見込があれば、中間取得者に請求することも視野に入れた方がよいと思います。