ある過労死事件について

 池野 由香里

2005年06月01日

【ある過労死事件】
平成16年8月にある過労死事件について大阪地裁で判決が下されました。
内容は、ある中古車雑誌編集会社のアルバイト社員(死亡当時21歳)が心筋梗塞で死亡した事件について、過労死であるとして、会社の安全配慮義務違反による損害賠償が認められたというものです。
これまでにも、過労死による損害賠償請求事件の判決を紹介したことがありますが、今回も一つの事例としてご紹介します。

【死亡と業務との因果関係について】
一般に、使用者は、労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が加重に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うとされています。
実際問題として、過労死事件について最も問題となるのは、当該死亡が、本当に業務と因果関係があるか、という点です。
人間も、生き物である以上必ず死亡する存在であり、業務ひいては使用者側の安全配慮義務違反が決定的な要因となっているのか、ということが問題になるのです。
この件では、死因を解剖医学的に確定することはできなかったものの、死亡1週間前で50時間30分、死亡4週間前で88時間の時間外労働をしていたことや、死亡前の9日間は休日なく連続して勤務していたことなどから、死亡と業務との間に因果関係があると認定されました。

【使用者として注意すること】
好況の兆しのあるなか、企業側が長年採用を手控えてきたこともあり、今後人手不足が発生する可能性があります。
本件では使用者に対して、合計1億1000万円以上の支払が命じられました。
使用者としては、労働者に加重な労働を強いることは、このような重大な結果を招く場合があることに充分な注意が必要です。