事務職員のエッセイ

2019年09月15日
思わぬ効果

8月にお休みをいただいて軽井沢へ行ってきた。
連日の豪雨予報に躊躇していたが、エイヤで行ってみることにした。案の定、早朝の豪雨で新幹線のダイヤが乱れていたが幸運にも雨が上がり定刻通りの新幹線で無事に到着できた。
駅に着くと改札口に人だかりが。なんとほぼ同時刻に上皇様ご夫妻も軽井沢入りされるとのことで、少しお待ちしてお姿を拝見することが出来た。お車から手を振っていただいたことは何度かあるが歩くお姿をすぐ間近で拝見できたことに大興奮だった。
興奮冷めやらぬままにホテルに向かうと、ウェルカムドリンクとしてシャンパンのサービスがあるとのこと。オシャレなお皿には4種のお菓子が盛られており、素敵な雰囲気にうっとりである。おや?お菓子の中にひと際目を引く巨大な黒い粒2つ。ま、まさか。こちらは長野県産の巨峰のレーズンでございます、とこれまた素敵なホテルマンから説明を受けたが、初めて見るその大きさに恐怖で顔がひきつる。

~恐怖。そう、私がこの世で唯一絶対に食べられないものがレーズンなのである。
カエルもワニも食べれるけれどレーズンだけはあきません。
小学校にあがる前はレーズンのお得袋を抱えてむさぼっていた記憶があるのだが、小学校の給食のぶとうパンがいかんせん不味すぎた。
不味すぎて、うちの犬ですら、パンの部分を食べてレーズンだけを吐き出すという技を編み出した程である(先生に隠して持って帰るものの処分に困り、犬に食べさせてみたのである)。それ以来この歳まで、レーズンは一度も食べたことが無い。
なぜみずみずしいぶどうをわざわざ干すのか意味がわからない。干すなんて勿体ないことはせずに全部ワインに回して生産量をあげたほうが世のためである。
レーズンバターサンド、パウンドケーキ、チーズケーキにチョコケーキ。意外とレーズンを使ったものは多く、うっかり口に入れてしまってテンションだだ下がりにならぬよう、原材料の表示をまっさきに確認し身の安全を図ってきた。
グラノーラに混ざっているカラッカラに干からびたカケラであればほとんど味がしないので食べられる、というところまでは確認済みである。

というわけで、いつもであれば間違っても手をださないところだが、こんな素敵なホテルで出されるレーズンであればよほど厳選された高級なものに違いない。しかもどでかい巨峰を干すとは、想像の斜め上をいっている。
上皇様ご夫妻のこともあって気分が高揚していた私は、なんだかイケそうな気がする~!と天津木村のようなことを言ってほんの少しだけ口に含んでみた。自分の意思で食べたのは6歳以来である。
レーズンというよりはプルーンのような風味。しかもしっかり乾いていて苦手なグニョグニョ感ナッシング。チョ、チョ、チョット待ってお兄さん、懐かしのラッスンゴレライが鳴り響く。イケる。イケるというより、コレ美味しい。人生の難関を一つクリアして、大きく成長した気分である。頭の中で「祝」のくす玉を割っておいた。

旅ではその後もいいことばかりが続いた。
雨の予報が一転晴れに変わり諦めていた散策を満喫できたし、別荘地では同じ名字のオーナー立札を発見し自分の土地のような気分を味わえた。人気のカフェにも入れたし、地元のビールも美味しく、ホテルのサービスは最高で束の間のセレブ気分。さらにはちょうど高校野球の決勝の日でスマホで速報を確認しつつの散策だったが、知り合いのいる高校が優勝してもう大盛りあがりであった。ドーパミンだかセロトニンだかわからないが、幸福の脳内物質出まくりである。後日わかったことだが同時期に軽井沢で小泉進次郎氏が極秘挙式をあげていたそうである。言ってくれれば参列いたしましたのに。

そんなこんなで旅行の楽しい記憶と相まってレーズンの悪印象が薄れた私は、帰宅後速攻で巨峰レーズンを検索し、おそらくコレだというものを発見。現在品切れ中のため入荷待ちの状態である。検索しているうちに、昔どこかのお店で食べたフライドレーズンが美味しかったことを思い出し、代わりにこちらをポチっと購入してみた。脳内物質はいまだ出続けているようである。
届いたフライドレーズンは少し甘く加工してあり、ヨーグルトやシリアルに混ぜて食べるとカリカリとした食感で、黙っていればレーズンとわかる人は少ないかもしれない。

旅行にはストレス解消・リフレッシュの効果があるのはわかっていたが、まさか。この私が。レーズンに大切なお金を払う日が来るとは。カラッカラに乾いたやつ限定とはいえ食べれるようになるなんて。この世に「絶対」って無いんだなあ。レーズンの神様も泣いて喜んでいるに違いない。

あと苦手なものといえば数字である。どこに旅行すれば…。

気まぐれシェフ