<ポイント>
◆欠陥とは通常有すべき安全性を欠くことをいう
◆欠陥は3つの類型に分類することができる
◆製品の特徴に応じて適切な表示をしなければ欠陥と認定される
前回に引き続き製造物責任法(以下「本法」といいます)について解説します。今回は、損害賠償請求の要件となる製造物の「欠陥」とは何か、について解説します。
1 欠陥の定義について
本法において、欠陥は「当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。」と定義されています。
このように欠陥とは安全性を欠くことをいうのですが、安全性を欠いた原因によって欠陥を次の3つに分類することができます。実務上はこの3つの分類を意識して欠陥の存否を判断することになります。
・製造上の欠陥
製造物が設計・仕様どおりにつくられず安全性を欠いた場合
・設計上の欠陥
製造物の設計段階で十分に安全性に配慮しなかったために安全性を欠いた場合
・指示・警告上の欠陥
除去し得ない危険性が存在する製造物について、その危険性の発現による事故を消費者側で防止・回避するのに適切な情報を与えなかったために安全性を欠いた場合
本法の欠陥の定義は、これらの類型を全て含み得るように規定されています。それでは、同定義の判断要素について順番に確認していきましょう。
2 製造物の特性について
製造物自体が有する固有の事情のことで、より具体的には、「製造物の表示」、「製造物の効用・有用性」、「価格対効果」、「被害発生の蓋然性とその程度」、「製造物の通常使用期間・耐用期間」などです。
⑴ 製造物の表示
事故につながる危険性を避けるための使用上の指示・警告がなされているかが判断要素となります。いくつか裁判例を見ていきます。
ア 給食食器視力低下事件
小学校3年生の女児が、給食食器の片付けの際、強化耐熱ガラス製ボウル(以下「本件製品」といいます)を落とし、破損したボウルの破片を右眼に受けて視力が低下したという事件。裁判所は、本件製品には製造上の結果、設計上の欠陥はないと判断したが、概ね次のように述べて指示・警告上の欠陥を認めました。製品の特徴を十分に考慮した表示が必要であることが分かります。
・本件製品は、一般的な磁器製の食器に比べて、落下等の衝撃に強く、破壊しにくく丈夫であるいう長所を有する。しかし、その反面、割れにくさの原因である三層からなるガラス層を圧縮形成する構造ゆえに、ひとたび破壊した場合には残留応力が解放されることにより、その破片がより高く、広範囲にまで飛散するという危険性を有する。
・つまり本件製品は、割れにくさという観点からは安全性が高い食器であるという一面を有するが、破損した場合の破損状況という観点からは危険性の高い食器であるともいえる。
・本件製品の説明書等には、ガラス製品であり、衝撃により割れることがあるといった趣旨の記載や割れた場合に鋭利な破片となって割れることがあるという趣旨の記載もある。しかし、これらの記載は、割れる危険性のある食器についてのごく一般的な注意事項であり、そのような記載がなされた程度では本件製品が割れた場合の危険性が一般的な食器に比べて大きいという情報提供がされたとはいえない。
・そうすると、説明書等に接した消費者は、本件製品について、陶磁器より割れにくい安全な食器であると認識し、仮に割れた場合でもその危険性はさほど変わらないと認識するのが自然。十分な表示がなされているとはいえず、欠陥がある。
本稿は以上で、次回も引き続き裁判例を解説します。
