少し前のことですが、NHKの朝の番組で、世界的に有名な山田和樹さんという指揮者が出演しているのを見ました。
山田さんは昨年6月にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団で指揮し、2026年/27年のシーズンから、ベルリン・ドイツ交響楽団の首席指揮者兼芸術監督に就任されるとのこと。
どれほどすごいことなのか私には分かりませんが。
山田さんは、確か高校時代に吹奏楽部で指揮者をしていて、その時から、いい演奏を作り上げようと部員みんなに手紙を書いたとかで、組織やチームのリーダーシップを考えるうえで、示唆に富む話がたくさんありました。
その山田さんは若手指揮者の指導にも熱心らしく、若手指揮者がオーケストラの練習で実際に指揮をしているのを横で見て、あとから講評して指導するという場面がVTRで映し出されていました。
そのときの若手指揮者に指導した言葉の一つに次のようなものがありました。
曰く、「(ある楽器の)演奏者が指示を待っていたのに、そのとき、あなたは何もしなかった。そんなときは、アイコンタクトだけでもいいんです。指揮者は忙しいんですよ。」と。
それを聞いて、なるほどと思いました。私も、何かの役で会議の司会をやったりするときは、できるだけ全体を見渡して、出席者が何か言いたそうだな、というサインを表情やしぐさから見逃さないようにしていて、そういうサインがあれば、その人に発言を求めたりして、議論が活発になるように心がけているという経験があるからです。
それはそうとして、その山田さんの話を聞いて、ふと思ったのが、オンライン会議では、アイコンタクトは無理だな、ということです。
画面越しには、目と目が合うということは基本的にあり得ません。
リアルで会わないと、人の目線とか、表情とか、体温とか、身体の厚みとか(背の高さも)が、全く分からず、実は画面上で動画を見て、音声を聞いているだけです。
これは人間のコミュニケーションにとって決定的に必要な何かを欠いているように思います。
つまり、オーケストラが指揮者を中心に互いに影響しあって音楽を奏でるように、人が集まって、みんなで何かをやり遂げるという人間が本来備えている能力や機能があるはずなのに、オンラインのコミュニケーションだけに依存してしまうと、そういった能力や機能がぶち壊されているだろうなと思います。
大企業の顧問先など関係者が多く集まる必要のあるときなどはオンライン会議が便利ですし、裁判期日も大部分がオンラインで行えるようになっています。
弁護士会の会議も、日弁連にしても大阪弁護士会にしても、オンライン会議が大半です。
移動時間やライフスタイルのことを考えれば、オンライン会議が便利に決まっていますし、その活用抜きに働き方を変えていくことはできません。
他方で、言葉のコミュニケーションだけにとどまらない、表情、態度、その場の雰囲気も含めて言葉にならないコミュニケーションを欠いていると、人間同士の関係はますます希薄になって、組織やチームの活力は削がれていく一方ではないかと思います。
今、世界各国で分断が起きていると言われますが、そのことはコロナ以降、オンライン上のコミュニケーションが主流となっていることとどこかで絶対に関係していると思います。
人の意見も、スマホでスクロールする画面でしか見ないので、相手との関係や生身の人間に対する尊敬や遠慮がなくなって先鋭化するのは避けられません。
暗澹たる気持ちにもなってしまいますが、自分自身の態度や生活は、そうはならないようにしたいと思っています。
