製造物責任法について(その1)
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<ポイント>
◆製造物の欠陥により被害を被った者は製造業者に対して責任追及できる
◆製造物責任法については消費者庁が逐条解説を公表している
◆製造物とは「有体物」であり「動産」であり「製造又は加工された」物を指す

 

今回から複数回に亘って製造物責任法について解説をしようと思います。製造物責任法とは、端的に言えば、製造物に欠陥があり、その欠陥が原因で生命・財産に損害を被った者がいる場合に、被害者から製造業者に対する損害賠償請求を可能にする法律です。製造物責任法については、消費者庁が逐条解説(法律の条文を1つ(1条)ずつ取り上げて解説すること)しており、実務上の参考になります。本稿では、製造物責任法の対象となる「製造物」とは何かを解説したいと思います。製造物に該当するためには、(1)有体物であること、(2)動産であること、(3)製造又は加工されていることの3つの要件を満たす必要があります。以下、順に解説します。

(1)有体物であること
有体物について、法律上の定義はありませんが、一般に空間の一部を占める有形的存在(分子が存在する物質)のことをいいます。したがって、電気等のエネルギー、音楽、サービスといった無体物は、製造物に該当しません。ここでやや複雑なのがソフトウェアです。ソフトウェア自体は無体物ですから、製造物に該当しないことになります。しかしながら、ソフトウェアを組み込んだ有体物は製造物に該当します。

(2)動産であること
動産については、民法において、不動産以外の全ての有体物と定義されています。それでは不動産がどのように定義されているかというと、土地及びその定着物と定義されています。そして、土地の定着物とは、土地に付着しており別個独立のものとはされないものを指すと考えられています。典型的には建物です。一方で、経済的に土地と独立した価値があり、容易に移動ができるものは定着物には該当しません。このように不動産に該当するか否かの結論は、土地との接着具合によって変わります。ここで重要なのが、ある有体物が製造業者の引き渡し行為時点で動産であれば、その後に不動産になっても製造物責任法が適用されるということです。例えば、AがBにエスカレーターの部品を引き渡し、Bがその部品を使用してエスカレーターを製造してCに引き渡し、最終的に工事業差によってCの建物内に設置された場合、設置されたエスカレーターは不動産に該当します。しかし、AがBに引き渡した部品も、BがCに引き渡したエスカレーターも、引き渡し時点では土地と接着しておらず、動産に該当していないため、製造物責任法の対象となるのです。

(3)製造又は加工されていること
製造とは、法律用語辞典によると、原材料に手を加えて新たな物品を作り出すことで、「生産」よりは狭い概念とされています。また、加工とは、動産を材料としてこれに工作を加え、その本質を保持させつつ新しい属性を付加し、価値を加えること、とされています。
実際の裁判例で問題になったイシガキダイを例にして考えると、釣られたばかりのイシガキダイは当然ながら製造又は加工されていません。これを単に冷凍しても、上記の定義における「新たな物品を作り出」した、「工作を加え…新しい属性を付加し、価値を加え」たとは言えず、製造又は加工されたとはいえません。一方で、この冷凍されたイシガキダイを解凍し、三枚に卸して、塩焼きにする等して調理して客に提供した場合には、まさに「新しい属性を付加し、価値を加え」たことになりますので、加工されたことになります。