執筆者:スオミュージック
2025年11月15日

※注釈 いずれも音楽記号(イタリア語)
segno(セーニョ) しるし、サイン
dal segno(ダルセーニョ)セーニョマークまで戻って繰り返し

今夏、布団を手放した。
気に入る布団が見つかるまでこれでしのごうと、数年前の初秋に量販店で買い求めたものだった。

迎えた冬、お値段以上のあたたかさで、ぐっすり眠れた。冬を越せた。お値段以上、誇張ではない。

(segno)

ようやく春、うららかな陽気で桜だ、新緑だ、と冬の寒さを乗り越えた達成感で、外に出て花粉と穏やかな風をめいっぱい浴びる。布団はシーズンオフの夏なら安いかも、と期待する。

そして夏、暑くて暑くてあたたかい布団を探せるほど、精神が磐石ではない。もう少し涼しくなってから探すことにして、目の前にある猛暑と向き合う。

気づけば秋、冬も乗り越えられたし、気に入る布団を急いで見つけなくてもいいかな、ということで、布団探しは留保する。

迎えた冬、ぐっすり眠れた。無事冬を越す。

ようやく春、うららかな陽気で桜だ、新緑だ、と冬の寒さを乗り越えた達成感で、外に出て花粉と穏やかな風をめいっぱい浴びる。物価高とはいえ布団はシーズンオフの夏なら安いかも、と期待する。

そして夏、暑くて暑くて暑すぎてあたたかい布団を探せるほど、精神が磐石ではない。もう少し涼しくなってから探すことにして、目の前にある終わりなき猛暑と向き合う。

気づけば秋、冬も乗り越えられたし、気に入る布団を急いで見つけて買い換えなくてもいいかな、ということで、のんびり探すことにして、布団探しは留保。

迎えた冬、ぐっすり眠れた。無事冬を越す。

(dal segno)

そうしてついに今夏、布団を手放した。
気に入る布団が見つかるまでこれでしのごうと、数年前の初秋に量販店で買い求めたものだった。

気に入る布団が見つかったわけではない。代替品をクローゼット内で発見した。それは寝袋。
ひとり暮らしを始めたころ、かさばらない客用布団感覚で購入したものの、使用することなく、とはいえ災害時避難用としても使えるであろうと、ともに引っ越しを重ね、今夏に至るまでクローゼットの奥においやっていた寝袋。

久しぶりに寝袋を広げて久しぶりに洗濯し、その晩、就寝。あたたかい。
当たり前だが寝る用の「袋」であるからか、保温が保たれているようで、ぐっすり眠れた。
寝返りも寝袋ごとうてたようだ。
はたして冬を越せるのか。
しかし、不安は全くない。
なぜならお向かいは布団屋さんなのだから。

(dal segno…?)