相続Q&A
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<1.不良息子を勘当することはできるのか>
(質問)
私の長男は高校生くらいの時からぐれはじめ、成人してからは全くつきあいがありません。
聞いたところでは暴力団に所属し、何度も警察のやっかいになっているようです。
私としては、まじめな次男と長女に財産を分け与えたいと考えており、長男には何一つ残す気はありません。
長男を勘当して親子の縁を切り、長男の相続権を失わせたいと考えていますが、そのようなことは可能でしょうか。
それが無理でも何か良い方法はないでしょうか。

(回答)
現在の法律は勘当という制度を認めておらず、実の親子関係を解消することはできません。したがって、勘当という方法では長男の相続権を奪うことはできません。
特定の相続人に財産を相続させない方法としては、まず、長男に財産を残さない旨の遺言を書くという方法があります。
しかし、長男には遺言によっても奪うことのできない権利(遺留分)がありますので、遺留分の限度では長男の相続権を奪うことはできません。
次に、相続人の廃除という方法があります。相続人の廃除とは、相続人があなたを虐待したり、重大な侮辱を加えたとき、その他著しい非行があったときに相続人の相続権を失わせることができる制度です。
本件では、あなたのご相談内容が事実であれば「著しい非行」に該当すると思われます。
相続人の廃除は、あなたが家庭裁判所に申し立てるか、遺言で書き残すことにより行います。

<2.養子の相続権>

(質問)
私は、幼いころに叔母の養女になりました。最近、実の父親が死亡しました。実の兄弟たちは、私は養女に出ているので相続する資格はないと主張しています。
私には実父の相続権はないのでしょうか。

(回答)
通常の養子縁組をしても実親との親子関係は切れませんので、実父母からの相続権を失いません。よって、あなたには実のお父さんの相続権があります。
但し、例外として、昭和62年から始まった特別養子縁組制度は、実親との親族関係が消滅するタイプの養子縁組です。よって、特別養子縁組の場合には相続権はありません。

<3.内縁の妻の相続権>

(質問)
私には、20年以上夫婦として生活してきた夫がいますが、入籍はしていません。夫は最近体調を崩して入院中です。夫には預貯金が数百万円あります。
夫に万一のことがあった場合、私がこの預貯金を取得する方法はあるのでしょうか。
また、私達夫婦は、夫名義で借りている家に住んでいるのですが、夫に万一のことがあれば私は出ていかなくてはならないでしょうか。

(回答)
内縁の妻には相続権はありません。
但し、他に相続人がいない場合は、家庭裁判所に申立を行うことによって、特別縁故者として財産の一部を取得することができます。
借家については、他に相続人がいない場合には、そのまま借家人の地位をあなたが引き継ぐことができます。
 また、上記の預金があなたとその男性が協力して取得した財産であれば、二人の共有財産としてあなたの持分が認められる場合があります。
いずれにせよ内縁の妻の権利は限られたものですし、法的手続をとるのも大変です。このような事態を避けるために、遺言を作成することをお勧めします。

<4.内縁関係の両親の間に生まれた子の相続権>

(質問)
私は母一人子一人で育ってきました。父親は私が子供のころに死亡したと聞かされていたのですが、実際は最近まで生きていたことがわかりました。戸籍上は私の父の欄は空欄になっています。父はかなり多額の財産を残して死亡したそうなのですが、父の正妻の子供たちは私を兄弟と認めてくれず、財産を一切分けてくれようとはしません。
私は泣き寝入りするしかないのでしょうか。

(回答)
正式な婚姻届をしていない男女の間で生まれた子を民法上「非嫡出子」といいます。あなたの場合、戸籍の父の部分が空欄ということですので、非嫡出子であり、かつ、認知も受けていないものと思われます。
非嫡出子については、別段の遺言がない限り、嫡出子の2分の1の相続権があることになっていますので、あなたがその方の非嫡出子であることが法律的に認められれば相続権はあります。
ただ、非嫡出子については「認知」によって親子関係が成立しますので、あなたの場合は、認知の訴えを起こす必要があります。
なお、認知の訴えは父の死亡後でもできますが、死亡後3年以内に起こすことが必要ですので注意が必要です。

<5.生前贈与や遺贈があったとき(特別受益)>

(質問)
最近私の父が死亡しました。
相続財産としては預貯金等が2000万円程度あります。相続人は私と妹、弟の3名です。
父は、5年前に私が家を買った際に頭金として400万円を贈与してくれました。
この場合、相続財産はどのように分けるべきでしょうか。

(回答)
本件のように相続人が生前の贈与を受けた場合や、遺贈(遺言による贈与)を受けた場合には、受け取った財産を「特別受益」として相続分から差し引くことになります。
「特別受益」とは、相続人が贈与や遺贈を受けた場合に、他の相続人との公平を期するため、贈与されたものや遺贈されたものをその人の相続分から差し引く制度です。
特別受益にあたる贈与とは、結婚や養子縁組をした際の持参金や、住居や商売上の店舗をもらった場合などが典型的な例です。
このほか、大学の学費が特別受益にあたるか否かが問題になることもありますが、他の兄弟とのバランスがとれていないか否かによって異なります。
本件のような住居を買うための資金の贈与は、典型的な特別受益にあたると考えられます。
したがって、相続財産の分け方を考えるにあたっては、まず、今ある財産2000万円に贈与された400万円を加えて2400万円を相続財産の総額と考えます。
そして、その2400万円を3で割って各人の相続分を算出します。これによりそれぞれの相続分は各800万円に決まりました。
ただ、あなたは既に400万円の贈与を受けているのですから、800万円から既に受け取った400万円を差し引いた400万円があなたが受け取るべき財産になります。
なお、あなたのお父さんが、あなたに対する贈与について「持戻しを免除」する意思を表示した場合、上記のような考え方はとりません。今ある財産2000万円を3等分することになります。

<6.生命保険金は相続財産となるか>

(質問)
最近私の父が死亡しました。
父にはめぼしい財産はなく、むしろサラ金等から数百万円の借金があるようです。
相続放棄をしようかと思っていたところ、父は生命保険に加入しており、私が3000万円の生命保険の受取人になっていることが判明しました。
相続放棄をすれば、生命保険金は受け取れないのでしょうか。
また、私には妹がいるのですが、生命保険金は私が独り占めしてしまってもよいのでしょうか。

(回答)
相続放棄をしても生命保険金は受け取ることができます。
その理由は、生命保険金は相続財産ではないからです。
生命保険金が相続財産ではない理由は、生命保険金を受け取る権利は、お父さんがいったん取得したうえであなたが相続したというものではなく、生命保険の加入契約によって(お父さんの死亡という事実を条件にして)最初からあなたが取得する権利だからです。
ですので、生命保険金はあなたが一人で取得して何ら問題はありません。
ただ、他の相続財産を分割するときに、あなたが生命保険を取得したという事実が特別受益として考慮されることはあります。

<7.保証債務も相続の対象となるか>

(質問)
私の父は2ヶ月前に死亡しました。
特に財産は残していません。
最近になって、父が友人の商売上の債務の連帯保証人となっていることがわかりました。
その友人は、商売がうまくいかず、数千万円の債務を抱えた状態で夜逃げしたと言う噂です。
こちらには誰も何も言ってこないのですが、このままにしておいて良いのでしょうか。

(回答)
あなたのお父さんは連帯保証しているということなので、あなたのお父さんの(マイナスの)財産として保証債務が存在することになります。
相続というのは、その人の財産を全て引き継ぐということですので、マイナスの財産である保証債務も当然に引き継ぐことになります。
それを避けるには、相続の放棄をするという方法があります。相続の放棄をすればプラスの財産もマイナスの財産も一切引き継がないということになります。
相続放棄ができるのは、相続の開始を知ったときから3か月以内ですので、あなたの場合、速やかに相続放棄の手続をとる必要があります。
相続放棄についてさらに、詳しくお知りになりたい方は、当ホームページ「法律トピックス 相続放棄について」を参考にして下さい。

<8.寄与分とは>

(質問)
私は、20年来父の経営する商店で働いてきました。二人で協力して働いたかいがあり、相当の収益を挙げるようになり、父の財産は現在1億円を超えています。
一方、私は世間並みの給与程度しかもらっていません。こういっては何ですが、父の財産の形成には私の貢献が大きいと思います。
私には妹がいますが、遠方に嫁ぎ何も家業の手伝いはしていません。
父に万一のことがあった場合、私の働きは「寄与分」として、相続の時に考慮されると聞いたことがありますが本当でしょうか。
また、父が長期間病気になったりした場合には、私の妻が看護するしかないと考えていますが、妻の貢献についても「寄与分」は認められるのでしょうか。

(回答)
「寄与分」とは、共同相続人の中に被相続人の生前、その財産の維持または増加に特別の貢献をした相続人に与えられるものです。
したがって、あなたの場合は、あなたの貢献によりお父さんの財産が増えたということが認められれば、その分は相続分とは別にあなたが取得することになります。
寄与分の決め方は、相続人間の協議によります。
協議が成立しない場合は、家庭裁判所において調停を行ったり、審判という手続を行うことによって決定します。
ただ、寄与分が認められた場合でも、寄与分は相続財産の10%以下であるとされるのが半数近くを占めますので、寄与分というのはそれほど多く認められない傾向にあるようです。
なお、あなたの奥さんについては、相続人ではありませんので、寄与分は認められません。
あなた方の貢献や努力が報われるようにするには、生前に贈与を受けておくか、遺言を書いてもらっておくべきでしょう。

<9.遺産分割はどのように行うか>

(質問)
2年前に父が死亡しました。
父の詳しい財産は知りませんが、父が長男夫婦と居住していた家は父の名義です。その他貯金等がある程度はあると思いますが、詳しいことはわかりません。
通常四十九日の時に財産分けの話があると思うのですが、父と同居していた長男からは何の話もありません。
相続人は私と長男の二人だけです。
何となく長男に言い出しにくいままに、2年が経過してしまいました。
遺産分けの話はどのようにするものなのでしょうか。
今からでは遅すぎるでしょうか。

(回答)
遺産分割の話し合いを早急に行うべきです。
遺産分割の話し合いはいつまでに行わなければならないということは決まっていませんから、死亡後2年たっていても話し合いはできます。
遺産分割の話し合いにあたっては、まず、お父さんの遺産にどのような財産があるかを調査します。
確定の方法は、お兄さんから聞いたり、こころあたりの金融機関に問い合わせたりして調べます。お父さん宛にくる郵便物等をチェックするのも有効な方法です。
遺産の内容が確定すれば、基本的にはお兄さんとあなたとで遺産の分け方を話し合います。
遺産の分け方としては、特に遺言がなければ一対一で分割することになります。
二人の間で話し合いができなければ、どちらかが家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、調停委員の立ち会いのもとに話し合うことになります。
調停で話し合いがつかない場合は、審判という手続きに移行し、家庭裁判所が遺産分割の方法を決定することになります。

<10.生前の相続放棄の効力>

(質問)
最近父が死亡しました。
私が長年父と同居しており、父は痴呆が悪化したことから最終的には老人ホームで死亡しました。
相続人には私のほかに弟がいますが、弟は、父の生前、「親父の遺産はいらない。」と言っていました。
ところが、父が死んだとたん、私の介護の仕方に納得がいかないなどと言って、弟は私と同等の相続分を主張しています。
私としては、父の世話は精一杯やってきたという自負もあり、弟の態度の豹変ぶりに到底納得ができません。
弟には相続権があるのでしょうか。

(回答)
結論から言うと、弟さんには相続権があります。
相続放棄は、相続が開始し、自分が相続人となったことを知ってから3か月以内に裁判所に申し出て行うことになっており、原則として生前には相続放棄はできません。
ですので、仮に弟さんがお父さんの生前に財産はいらないと言っていても、弟さんが翻意した以上、弟さんには相続権があります。
このような事態を避けるためには、お父さんに遺言を作成してもらうべきでした。
同時に弟さんには、一切の権利主張をしないという意味で、遺留分放棄の申立を家庭裁判所にしてもらって許可をもらっておけば万全だったのです。

<11.不動産の遺産分割>

(質問)
最近私の父が死亡しました。
財産としては、居住していた土地建物のみです。
相続人は私を含めた子供3名です。
どのような分け方が考えられるのでしょう。

(回答)
遺産分割の方法としては、以下の方法があります。
(1)現物分割(不動産そのものを三等分する。)
(2)換価分割(不動産を一括して売却し、その代金を三等分する。)
(3)代償分割(相続人の誰かが不動産を取得し、そのかわりにその人が他の相続人に対し相続分に相当する金銭を支払う。)
もっとも多いのは(3)の方法であり、特に(1)の方法は困難なことからほとんど行われていません。

<12.遺産の評価方法>

(質問)
私の父は、5年前に死亡しました。
ところが、遺産分割の話し合いがなかなか進まず、やっと各相続人の取り分の割合が決まり、もうすぐ遺産分割の協議が整いそうです。
しかし、父の所有の不動産の価値は5年前と比べれば大幅に下落しています。
また、株式の価値も下落しているようです。
各財産の評価はいつを基準に行うべきでしょうか。

(回答)
遺産分割協議の時点の評価額を基準とすべきです。
不動産については、遺産分割協議の時点の時価がその不動産の価額になります。不動産の時価は、路線価・公示価額等を参考に相続人間の協議により決定します。
株式については、遺産分割協議の時点の取引価格をその株式の価額とします。市場性のない株式については、遺産分割協議時の評価額がその株式の価額となります。

<13.相続人の一部の者が行方不明の場合>

(質問)
最近母が死亡しました。
父はずっと以前に死亡しており、相続人は私と弟及び妹の3名です。
ところが、弟は5年ほど前から多額の借金をつくって行方不明で、現在どこにいるのかも何をしているのかも全くわかりません。
このような場合、遺産分割の話し合いはどのようにすればよいのでしょうか。
弟を除外して、妹と話し合うことはできるのでしょうか。

(回答)
相続人の一部を抜かした協議は無効ですので、妹さんとのみ遺産分割協議をしても意味がありません。
できれば弟さんを探し出すのが一番なのですが、それが不可能な場合は、「不在者の財産管理人」を家庭裁判所に選任してもらわねばなりません。
財産管理人が、裁判所の監督のもとで、弟さんのかわりに、遺産分割協議に参加することになります。
なお、弟さんの生死自体が7年以上不明の場合には、家庭裁判所に申し立てて失踪宣告をしてもらい、不明時から7年経過した時点で弟さんが死亡したものとして、弟さんを除いて、遺産分割協議をすることが可能です。

<14.遺産分割後に相続人が現れた場合>

(質問)
3年前に父が死亡し、母と私と弟の3人で遺産分割協議を行い、遺産の分割等も全て終了しました。
ところが、父に母以外の女性との間に女の子がいたことが発覚しました。
裁判によって認知の請求がなされ、戸籍にも父の子として記載がなされています。
その妹は遺産の分割を要求しています。
今後、どのような手続になるのでしょうか。

(回答)
妹さんの認知が、お父さんの死亡前になされていたのであれば、妹さんを除外して行われた遺産分割協議は無効であり、遺産分割協議をやりなおす必要があります。
 妹さんの認知が、お父さんの死亡後であれば、価格によって、妹さんの相続分を賠償することになります。

<15.相続税申告のしくみ>

(質問)
最近私の父が死亡しました。
相続人間での遺産分割協議も終了しましたが、相続税の申告はどのようにして行うのでしょうか。

(回答)
相続税の申告は以下のとおり行います。
ア 各自が取得した財産について課税価額を求める。
イ その課税価額の合計額を算出する(借金等のマイナスの財産や葬式費用等を控除する。)。
ウ そこから遺産にかかる基礎控除額(5000万円+法定相続人数×1000万円)を差し引く。
エ 基礎控除後の金額を法定相続分で分配したものと仮定して、各法定相続人の相続税額を求める。
  これを合算したものが相続税の総額となる。
オ エで求めた相続税の総額を現実の遺産取得割合で分けた金額が各自の相続税額となる。
カ これに各自の事情による、加算、控除をした後の金額が、現実の納付税額になる。
キ 相続税申告書をお父さんの最後の住所地の税務署長に提出する。期間は相続開始から10か月以内。
なお、イの課税価額の合計が基礎控除額を超えない場合は申告の必要はありません。

<16.遺産分割協議未了の場合の相続税の申告>

(質問)
私の父が9か月ほど前に死亡しましたが、相続人間で遺産分割協議が未だ整いません。
相続税の申告期間が間近に迫っていますが、どうしたらよいのでしょうか。

(回答)
まず、法定相続分または遺贈の割合にしたがって共同取得したものとして、各自の相続税の課税価格を求めます。
それ以降の計算及び申告の手順は前項のイ~キのとおりです。
後日、遺産分割協議が成立した場合には、現実に取得した場合の相続税課税価格にしたがって計算し直します。
その結果、申告額に不足を生じたときには修正申告をし、過大であったときは更正の請求をします。