ヤマダ電機が納入業者に従業員を派遣させた問題について

家電販売最大手のヤマダ電機は6月30日、新規オープン時の商品陳列・接客などのため、納入業者に対してその従業員を必要な費用を負担することなく派遣させたことが「大規模小売業者による納入業者との取引における特定の不公正な取引方法」に該当するとして、その取りやめ等を命じる排除措置命令を公正取引委員会から受けました。

公取委の事実認定は次のとおりです。
○ヤマダ電機と継続的な取引関係にある家電製品等の納入業者は約370社あるが、これら業者にとってヤマダ電機は重要な取引先であり、その多くは同社との継続を強く望んでいるため、商品の品質や納入価格などの取引条件とは別に同社からの種々の要請に従わざるを得ない立場にあり、その取引上の地位は同社に対して劣っている。
○ヤマダ電機は、遅くとも2005年11月以降、店舗の新規オープン時や改装オープン時に、納入業者に対し、その納入業者の製品かどうかにかかわらず、商品の陳列や接客を行わせることとして、事前の合意もなく、従業員の派遣が必要な店舗、日時等を連絡して、その派遣を要請した。
○要請を受けた納入業者の多くはこの要請に応じざるを得なかったが、ヤマダ電機は派遣に必要な費用を負担していない。ヤマダ電機は2007年5月まで、延べ361店舗のオープン作業について、納入業者250社に対し、延べ16万6000人の従業員を派遣させている。
○ヤマダ電機はパソコン及びデジカメ納入業者に対して、その納入業者から購入した商品のうち、展示品や顧客からの返品分を「展示処分品」として販売するために必要な初期化作業を行わせるためにも、同様に派遣を要請した。
○2007年5月10日、公取委が本件について審査を始めたところ、ヤマダ電機は同年11月ころ、オープン時に納入業者に従業員等を派遣させる行為を取りやめた。

公取委は、このようなヤマダ電機の行為が、その取引上の地位が自社に対して劣っている納入業者に対し、一定の正当な場合に該当しないにもかかわらず、自社の業務に従事させるため、納入業者の従業員を派遣させたものと判断、「大規模小売業告示第7項」に該当するとして、違反行為の取りやめ、その行為を取りやめて今後も行わない旨取締役会で決議すること、独占禁止法の遵守についての行動指針の作成などを命じる排除措置命令を出しました。

同告示は、大規模小売業者が自社の業務に従事させるため納入業者にその従業員を派遣させたり、自社の従業員の人件費を負担させたりすることが「不公正な取引方法」にあたるとするものです。
これには一定の例外があります。大規模小売業者が、あらかじめ納入業者を得て、当該納入業者の商品の販売業務のみに従事させる場合を適法としています。ただし、その従業員の技術や能力が有効に活用されることで納入業者の直接の利益となる場合に限られます。そのほか、派遣の条件について納入業者とあらかじめ合意をし、かつ、必要な費用を大規模小売業者が負担する場合も適法としています。
今回のヤマダ電機の事例はいずれの例外にも該当しないと公取委は判断しました。