2012年6月株主総会の留意事項

 池田 佳史

2012年04月01日

<ポイント>
◆2012年6月の定時株主総会には重大な法改正はない
◆社外取締役の選任や社外役員の独立性に関する質問対策を
◆総会運営のIT化は一層すすむ見込み

多くの上場会社は定時株主総会を6月末に開催しますが、それまであと約3ヶ月となりました。
2011年の定時株主総会は、東日本大震災による影響を受けて震災に対応した総会シナリオや頻発する余震や電力不足のもとでの不測の事態に備えた準備などが大きな関心事でした。
他方、株主総会に重大な影響を及ぼす法律・規則の改正や証券取引所規則の改正はありませんでした。
2012年の定時株主総会についても、昨年同様、現在のところ大きな影響を及ぼす法律等の改正はありません。
ただ、計算書類の記載内容に若干の変更が必要になりました。会社計算規則の改正により、株主資本等変動計算書において表示する項目が「前記末残高」から「当期首残高」になっています。
また、株式の併合や株式の分割をした場合、一株当たりの純資産額、当期純利益金額・当期準損失金額の算定に関する規定が新設されています。該当する会社は注意が必要です。
これら以外の2012年の定時株主総会で留意すべき点として、以下には、昨年発覚した企業不祥事によるコーポレート・ガバナンスに対する意識の高まり、昨年来関心を集めている暴力団排除条例および総会運営のIT化について述べます。

昨年発覚したオリンパス、大王製紙による不祥事により、改めてコーポレート・ガバナンスのあり方について社会の関心が高まってきました。
たとえば、平成23年12月7日に法制審議会会社法制部会によって「会社法制の見直しに関する中間試案」が取りまとめられました。
この試案では、公開・大会社である監査役会設置会社(A案)もしくは有価証券報告書の提出義務がある会社(B案)に社外取締役の選任の義務づける案が、現行制度を変更しない案(C案)とともに併記されています。
また、今年3月6日に明らかになった民主党の提言でもB案と同じ案が提案されていると新聞等で報ぜられています。
このようにコーポレート・ガバナンスにおける、会社と独立した社外役員の重要性が意識される中で、今年の株主総会においては、社外取締役を選任していない理由や社外役員が十分な独立性を有しているかについて株主から質問される可能性は高くなったものといえます。

昨年中にいわゆる暴力団排除条例が全国47都道府県すべてに施行されました。
これにより、内部統制システムの一内容として、反社会的勢力の排除に関する基本方針を新たに定める等の対応が検討事項としてあがってきました。
このような基本方針を定めることは望ましいものですが、事業報告書には内部統制システムの概要を記載することになっているため、新たに反社会的勢力の排除に関する基本方針を定めた場合にはその概要を事業報告書に記載することになります。
また、このような基本方針を定めるか否かに関わらず、反社会的勢力の排除に対する社会的な関心も高いことから、反社会的勢力の排除に関する質問が株主からされる可能性があります。

昨年は東日本大震災の影響による紙不足やエコロジー意識の高まりによって、総会運営のIT化がすすみました(電磁的方法を利用した制度の詳細はこちらを参照)。
特に「ウェブ開示」(事業報告などの一部をウェブサイトに掲載して書面交付を省略する制度)の利用がすすみました。商事法務の調査によれば1849社中280社の会社がウェブ開示制度を利用しているとのことです。この280社の半数の140社が昨年からウェブ開示制度を利用し始めたとのことです。
また、電磁的方法により議決権行使ができる「電子投票制度」や「議決権電子行使プラットフォーム」の採用も徐々に増加しています。
今年も総会運営のIT化は一段と進むものと予想されます。「ウェブ開示」、「電子投票制度」、「議決権電子行使プラットフォーム」を採用しない場合には株主総会でその理由を質問されることも予想されます。