酒席での暴言を理由とする降格処分の有効性が判断された判例
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今回は、団体職員が酒席において、監事と理事に対し、暴言を発したことを理由に、総務部長かつ出納責任者の地位から4階級降格されたとして、降格処分の有効性を争い、元の地位にあることの確認、差額分給与の支払い、慰謝料の支払などを求めた事案(札幌高裁・平成19年1月19日)を紹介したいと思います。

本件では、第一審、控訴審とも、職員の暴言があったことは認めたものの、その暴言を理由に降格処分することの可否の点で判断が分かれたものです。
第一審では、暴言は、勤務時間中に行われたものではなく、職務執行との関連性が薄いとして、本件降格処分が、人事権の裁量権を逸脱したものと判断され、降格処分は無効であり、慰謝料の支払も認めました。
一方、控訴審においては、暴言が発せられた酒席の費用を団体が支出していることを認定し、かつ出席者が理事等を含めた団体の職員に限定されていることから職務執行との関連性がないとはいえないとしました。
また、この職員は、それまでに役員に対する発言で始末書を提出したことがあるなどの事実も認定し、同種の非行があることから矯正可能性が乏しいとし、職員が事務部門の長として部下職員を指導監督するほか、上部団体または関係団体との折衝をする職務を担う管理職であるから、上級役職員に対する不穏当な発言を繰り返す者にはその適格性がないものというべきであるとして、降格処分の有効性を認めました。

この判例では、職員の役職が管理職であり、酒の上とはいえ暴言を繰り返すということが職位にふさわしくないという判断がなされたものだと思われます。
とはいえ、この職員に暴言を理由とする処分の前歴がなければ、控訴審のような結論にはならなかったと思われます。

第一審と控訴審とで判断が分かれているところから、降格処分の限界事例として参考になると思われます。