民事再生法について
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【民事再生法とは】

平成12年4月1日に施行された、倒産処理に関する新しい法律です。
従来の和議手続(和議法)に代わる再建型の倒産処理手続です。
再建型とは、破産のように廃業、清算してしまう清算型の倒産処理に対する用語です。
債務の返済が困難となっている会社や個人(債務者)が、債権者の同意に基づき、再生計画に従って債務を弁済し、事業の継続や経済生活の安定をはかっていく制度です。
倒産に伴う資産の劣化や従業員の離散を食い止め、早期の再建を促すとともに、営業譲渡などをスムーズに進めるのがねらいです。

【民事再生法の特徴】

1 申立ては、破産状態に至る前の段階、つまり資金繰りが完全に行き詰まる前にをすることができます。
これによって、資産劣化や従業員の士気低下をとりあえず抑えることができます。
従来の和議は、破産原因があることが申立ての要件になっていたため、申立時にはすでに再建が困難な状態になっていました。

2 手続開始後も、原則として従来の経営者自身が業務遂行権、財産管理処分権を持ちます(この点は和議と同じです)。
これは、破産の場合に、破産管財人に財産管理権が移り、会社更生の場合に更生管財人に業務遂行権、財産管理処分権が移るのと異なります。
いわば、経営者が自主再建を目指す場合の手続といえます。
但し、法人の場合は、裁判所の判断で、管財人(保全管理人)に管理を命じたり、監督機関として、監督委員、調査委員、債権者委員会を設けることがあります。

3 裁判所によって手続開始の決定がなされると、債権者は強制執行、仮差押、仮処分など、法的な権利行使を禁止されます。
債権者は、原則として、再生計画にしたがって弁済を受けるほかありません。

4 債権調査や債権確定の手続が簡便になりました。

5 再生計画案は手続開始後に、事業を継続しながら作成すればよい、ということになりました。
和議では、申立てと同時に再建計画(和議条件)を提出しなければならず、不便でした。

6 再生計画が認可されるには、債権者の過半数で、債権総額の2分の1以上の賛成または同意、および裁判所の認可決定が必要です。
和議の場合は要件が債権総額の4分の3となっていましたので、決議要件が大幅に緩和されたことになります。

7 履行の確保、つまり再生計画に従ってきちんと支払いがなされるように、監督委員または債権者委員会が監督します。
もし支払いが遅滞した場合は、債権者は強制執行ができるようになります。
支払いが著しく遅滞した場合は、再生計画が取り消されることもあります。
和議では、履行確保の手段がなく、誠実に履行されないことが多かったため、これが和議手続に対する信頼を低くしていました。

8 申立会社の役員に違法行為などがあった場合は、個人的に会社に対して損害賠償義務を負いますが、その責任追及が新法では容易かつ効果的にできるようになりました。

9 担保権は別除権(再生計画に基づく支払いとは別枠)として扱われますが、その担保権に基づいて競売しようとしても、裁判所から中止命令が出されることがあります。
また、担保財産が事業の継続に欠くことのできないものであるときは、その財産の価額に相当する金額を裁判所に納付して担保権を消滅させることができます。これは和議になかった新しい制度です。

10 再生計画認可の決定が確定したとき再生手続は終結します。
但し、監督委員が選任されている場合は、再生計画が遂行されたとき、または再生計画認可決定が確定した後3年を経過したとき再生手続は終結します。
また、管財人が選任されている場合は、再生計画が遂行されたとき、または遂行されることが確実であると認めるに至ったときに終結します。。

11 簡易再生といって、届出をした債権者の債権総額の5分の3以上の債権者が、債務者の作成した計画案に同意する場合は、債権調査手続を経ずに、直ちにその計画案について債権者集会で決議を行うことができる、という手続が設けられました。

12 同意再生といって、届出をした債権者全員が、債務者が作成した計画案に同意する場合は、債権調査手続も、計画案についての決議も省略して、裁判所が直ちに計画案を認可する、という手続も設けられました。

【民事再生法の申請状況】

医療法人社団ますみ会  東京 病院経営     負債額45億円
中真堂ほかグループ会社 東京 宝石・貴金属小売 負債額54億円
ベネッティ       東京 衣料品輸入販売  負債額4.6億円
東邦技研        東京 機械部品製造   負債額55億円
アールディエスほかグループ企業 東京 照明器具製造販売・工事請負 負債額198億円
興陵印刷        東京 印刷 負債額19億円
不二泉製菓       東京 和洋菓子製造 負債額11億円
東洋製鋼        茨城県石岡市 電炉メーカー 負債額59億円
植木鋼管        東京 建設用金属製品製造 負債額93億円
藤興業         神奈川県平塚市 自動車部品製造 負債額7.5億円
才門建設        岸和田市 土木建設工事 負債額180億円
アサヒ産業       吹田市 建設用仮設資材製造 負債額42.6億円
オーバル        茨木市 建築用金属製品製造 負債額6.5億円
高橋ビルディング    大阪市 不動産賃貸 負債額1334億円
松元工業ほかグループ会社 都城市 建設卸・建具工事 負債額55億円
日精電機        東京都 不動産賃貸・販売 負債総額約120億円
(Credit & Law No127より)