改正パート労働法について
【関連カテゴリー】

2008年4月から改正パート労働法が施行されます。
改正の趣旨は急速な少子高齢化、就業構造の変化等にかんがみ、短時間労働者がその有する能力をいっそう有効に発揮できる雇用環境を整備するため、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ることにあります。

なお、この法律によって保護される「パートタイム労働者」とは「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」のことをいいます。

改正内容は多岐にわたるのですが、主な改正点は下記のとおりです。

(1)労働条件の文書交付・説明義務
(2)待遇の決定についての説明義務
(3)均衡のとれた待遇の確保の促進
(4)通常の労働者への転換の推進
(5)苦情処理・紛争解決の援助

以下、個別に説明します。

(1)労働条件の文書交付・説明義務
労働基準法においても労働者を雇い入れる際には労働条件を明示することが義務付けられており、特に「契約期間」「仕事をする場所と仕事の内容」「始業・終業の時刻や所定時間外労働の有無、休日・休暇」「賃金」などについて文書で明示することが義務づけられています(違反の場合は30万円以下の罰金。)。
今般それに加えて、パートタイム労働者を雇い入れるときは速やかに「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」を文書の交付等により明示しなければならなくなりました。違反の場合、行政指導によっても改善がみられなければ10万円以下の過料に処せられるので注意が必要です。

(2)待遇の決定についての説明義務
雇い入れ後、パートタイム労働者から求められたとき、そのパートタイム労働者の待遇を決定するに当たって考慮した事項を説明することが義務化されました。
パートだから賃金は○○円という説明では義務を果たしているとはいえず、職務の内容等を勘案した中身のある説明が求められるとされています。

(3)均衡のとれた待遇の確保の促進
パートタイム労働者の待遇はその働きや貢献に応じて決定することが求められます。
「業務の内容」「人材活用の仕組みや運用など」「契約期間」の3つの要件が通常の労働者と同じかどうかにより、賃金、教育訓練、福利厚生などの待遇の取扱いについて規定がなされています。
すなわち上記の3要件が通常の労働者と同じとみられるパートタイム労働者については、パートタイム労働者であることを理由とする差別禁止義務を課しています。
ただ、上記の3要件が通常の労働者と同じとみられる労働者とは、具体的には通常労働者と業務内容と当該業務にかかる責任が同じで、転勤の有無・範囲等、職務の内容と職種の変更の有無、職務の内容と職種の内容の変更の範囲などが全雇用期間を通じて同じで、しかも労働契約期間が実質的に無期となっているパートタイム労働者のことをいうとされており、現実問題としては少数であるといわれています。

(4)通常の労働者への転換の推進
事業主は、通常の労働者への転換を推進するため、その雇用するパートタイム労働者について次のいずれかの措置を講じなければなりません。
 ・通常の労働者を募集する場合、その募集内容をすでに雇っているパートタイム労働者に周
  知する。
 ・通常の労働者のポストを社内公募する場合、既に雇っているパートタイム労働者にも応募す
  る機会を与える。
 ・パートタイム労働者が通常の労働者へ転換するための試験制度を設けるなど、転換制度を
  導入する。
 ・その他、通常の労働者への転換を推進するための措置

(5)苦情処理・紛争解決の援助
まず事業主がパートタイム労働者から苦情の申出を受けたときは、苦情処理機関に苦情の処理をゆだねるなどして事業所内で自主的な解決を図ることが努力義務化されました。
そして外部による紛争解決援助の仕組みとして、紛争当事者の援助の申出に応じて行う「都道府県労働局長による助言、指導、勧告」の制度と、当事者が希望し都道府県労働局長が必要と認めた場合に行う「均等待遇調停会議による調停」の制度が設けられました。
なお、これらの紛争解決援助の仕組みを利用したことによるパートタイム労働者に対する不利益取扱いは禁止されています。

今般の改正は、対象となるパートタイム労働者が限定される、罰則等が限定的である、等批判も多いのですが、働き方が多様化するなかその働きに応じてフェアな取扱いを行うという考え方が広がっていく一助になるのではないか、と思います。