労働契約法が改正されました
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<ポイント>
◆5年を超えて反復継続された有期契約は期間の定めのない契約に
◆無期契約に転換後の労働条件の変更にはあらかじめ定めが必要
◆判例理論の「雇止め法理」は明文化され存続

1年契約や6か月契約など、契約期間の定めのある労働契約を有期労働契約といいます。
今回、労働者が安心して働き続けることができるようにするため、有期労働契約のくりかえし(反復更新)がなされるなかで行われる雇止めに関して、労働契約法が改正されました。
改正労働契約法は、平成24年8月10日に公布され、一部(後述する「雇止め法理」の法定化は公布日から施行されています。)を除いて1年を超えない時期に施行されます。

今回の改正の柱は3つです。

一つ目は、「有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換」です。
これは、今回もっとも重要な改正ですので詳しく述べます。
改正により、2回以上の有期労働契約が締結され通算期間が5年を超えた場合は、労働者の申し込みにより、有期労働契約が期間の定めのない労働契約に転換されることになりました。
労働者の無期転換申込権は、有期労働契約の更新が1回以上行われ、かつ、通算の契約期間が5年を超えている場合にのみ発生します。
原則として、更新された契約と契約の間に6か月以上(直前の契約期間が1年未満の場合は厚生労働省が定める期間)の空白期間(クーリング期間)がある場合には、前の契約期間は通算されません。
なお、有期労働契約は、労働基準法14条により、原則として3年を超える期間については締結できません。ただし、その例外として、労働基準法14条により、一定の事業の完了に必要な期間を定めるものとして締結が認められている「契約期間が5年を超える有期労働契約」が締結されている場合で、かつ、更新が一度もされていない場合は、たとえ労働期間が5年を超えても、無期転換申込権は発生しません。
無期転換申込権は、通算契約期間が5年を超えることとなる有期労働期間の契約期間の初日からこの労働契約が満了するまでの間に、行使する必要があります。
無期転換申込権が行使された場合、労働契約の内容は、期間の定めのみを変更するものとし、その他の労働条件については同内容の契約が締結されたものとされます。
ただし、個々の労働契約、就業規則及び労働協約により、「別段の定め」をすることにより、期間の定め以外の労働条件を変更することは可能です。
もちろん、職務の内容が変更されないにもかかわらず給与等の労働条件を従前より低下させることは望ましくなく、このような運用は無効とされるケースが多いと思われます。
なお、厚生労働省労働基準局長から各都道府県労働局長に出された通達(基発平成24年8月10日第2号)によれば、「無期転換申込権の行使によって期間の定めのない労働契約に転換した場合の解雇については、個々の事情により判断されるものではあるが、一般的には、勤務地や職務が限定されているなど労働条件や雇用管理がいわゆる正社員と大きく異なるような労働者については、正社員とは当然には同列に扱われることにならない」とされています。
すなわち、この場合、解雇の有効性はいわゆる正社員の場合よりゆるやかに判断されることを示唆しているようですが、今のところどのような事情があれば解雇が有効となるのか不明であり、今後の通達や判例などが待たれるところです。
今回の改正は、一見、会社側にとって非常に厳しいもののようにも見えます。
ただ、これまでも後述の判例上の「雇止め法理」により3年の期間をもって、契約更新をするかどうかジャッジしていた企業が多いと思われますので、その点では運用上は大きな変更はないように思います。
今後は、3年の経過時のみならず、5年の期間経過時にも、期間の定めのない契約に転換させるのかどうかを適切に判断することが必要となります。また、あらかじめ期間の定めのない契約に転換させる場合のルールを就業規則や個別の労働契約において定めておくこと(たとえば、労働日が週4日であるのを週5日にする、労働時間を正社員なみにするなど)をよく考えておくのが必要だと思います。

二つ目は、有期労働契約の更新等について判例上のいわゆる「雇止め法理」を法律で明文化しました。
これまでも、判例上、有期労働契約の反復更新により無期労働契約と実質的に異ならない状態で存在している場合、または、有期労働契約の期間満了後の雇用継続について、労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由が認められる場合に、使用者が雇止めすることが合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、雇止めは認められず、同一の条件で労働契約が更新されたものとみなす、といういわゆる「雇止め法理」が適用されていました。
今回、法改正により、この法理をほぼそのまま労働契約法において明文化しました。
現在、実務上は、この法理の運用状況にかんがみ、有期雇用契約についてはトータル3年で雇止めを行うかどうかの判断をしている企業が多いのですが、今回の法改正によっても、期間は明確にされていないままです。
しかし、今回の改正は従前の判例理論の明文化ということを考えると、実務上は、従前の運用どおり3年が経過した時点で「雇止め法理」が適用される可能性が高くなると思われます。
この改正により、改正点の一つ目である5年で無期契約に転換」と並行して、「雇止め法理」が存続することが明確化されました。
これにより、実務上は、有期契約の更新継続により3年と5年の期間が経過した時点で当該労働者についてどのような扱いをするのかを決める必要があると思われます。
前述のように、この改正分についてはすでに施行されています。

三つ目は、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止です。
有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合、その相違は、職務の内容や配置の変更の範囲等を考慮して、不合理と認められるものであってはならないとの規定が新設されました。