授業目的公衆送信補償金制度(改正著作権法)

 井上 彰

2020年06月01日

<ポイント>
◆授業目的公衆送信補償金制度の早期実施
◆改正著作権法35条運用指針(令和2(2020)年度版)

新型コロナウィルス(COVID-19)の発生により、日常生活が大きく変わってしまいました。新型コロナウィルスは、2019年(令和元年)12月に中華人民共和国湖北省武漢市で発生が確認されました。当初は私も認識が甘く、新しいインフルエンザみたいなものが流行っているようだな、春節の時期には気を付けようくらいの気持ちでした。が、いつのまにか、オリンピックの開催が延期され、緊急事態宣言や各国でのロックダウンなど、あっという間に状況が変わってしまいました。米中間の関税合戦が、いつのまにかコロナウィルスを巡る鍔迫り合いにもなっているようです。

経済活動は勿論、学校教育の現場にも大きな影響が出ています。安倍首相から、全国すべての小中高、特別支援学校を対象に、3月2日から臨時休校が要請され、その後も臨時休校が維持される学校が多いように思われます。職場でもリモートワークが推進されているように、学校教育の現場もICT化が課題となっています。
従前より、教育機関の授業における著作物の利用については、「引用」(著作権法32条)の範囲内はもとより、対面授業のための複製や、対面授業で福製したものを同時中継の遠隔合同授業等のために無許諾での利用が可能でした。しかし、その他の公衆送信は権利者の許諾が必要となっていたため教育現場から許諾を得る手続きの煩雑さなどが問題視されていました。

そこで、平成30年5月、他の改正も含め「著作権法の一部を改正する法律」(平成30年法律第30号)が5月18日に成立し、同月25日に公布されていました。ただし、その他の改正はすでに施行されていますが、教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備(第35条関係)の施行日は、公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日(令和3年5月24日)までに定めるとされていました。今回の新型コロナウィルスの流行に伴い、当初の予定を早めて令和2年4月28日から施行されています。

これにより、その他の公衆送信についても、補償金を支払う必要はありますが、無許諾で利用できることになりました。もちろん、この改正によっても著作権者の利益を不当に害する場合は除外されていますので注意が必要です。例えば、ドリル・ワークブックなど児童生徒等による購入を想定した著作物のコピー・送信をすること、授業を受けるものに限らず誰もがみられるようにインターネット上に公開すること等は許容されません。
また、文化庁長官が指定する指定管理団体である一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS サートラス)は、改正著作権法第35条運用指針(令和2(2020)年度版)を公表しています。また、令和2年度に限って補償金額を特例的に無償として申請することも決定しています。

ワクチンや治療薬が開発されない限りは、新型コロナウィルス以前の状況に戻ることは難しく、これら開発のためには短くても1年から1年半の期間は必要であるとも言われています。学校の再開までに時間がかかることも予想されますが、他方で子供の教育を受ける権利も保護しなければなりません。
一日も早くこれまでの平穏な日常が戻ってくるのが一番ですが、コロナウィルスを契機として教育現場における、さらなるICTの活用とその推進が期待されます。

著作権法35条1項
(学校その他の教育機関における複製等)
第三十五条 学校その他の教育機関(営利を的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、公表された著作物を複製し、若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む。以下この条において同じ。)を行い、又は公表された著作物であつて公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし、著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

参考サイト
(1)文化庁 「授業目的公衆送信補償金制度の早期施行について」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/92169601.html
(2)一般社団法人 授業目的公衆送信補償金等管理協会
「改正著作権法第35条運用指針(令和2(2020)年度版)」を公表
https://forum.sartras.or.jp/info/004/