商標的使用について

 井上 彰

2019年11月01日

<ポイント>
◆商標としての使用と認められない場合とは

1 商標的使用
商標は、自他商品識別機能及び出所表示機能を本体とします。これら機能を発揮しない使用態様については、「商標的使用に該当しない」として、商標権侵害とはならないものと解されています。商標的使用は、裁判例により展開されたものですが、平成26年改正法26条1項6号により、明文規定が設けられました。(前各号に掲げるもののほか)「需要者が何人かの業務に係る商品または役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標」は商標権の効力が及ばないと規定されています。
2 分類・具体例
自他商品識別機能を発揮しない使用態様といっても抽象的でわかりにくいのですが、裁判例で現れた事例を分類すればその内容をよく理解することができます。以下の(1)ないし(3)に限られませんが、これら事例が良く挙げられます。参考までに具体例を一つずつ挙げます。
(1)標章が単に商品等の属性・内容・由来等についての説明と認識される場合
登録商標「テレビマンガ」の商標権に関し、テレビ漫画「一休さん」のキャラクターを用いたカルタで、その容器の蓋の左上隅に小さく「テレビまんが」と記載した行為等が侵害か否か争われた事案があります(テレビまんが事件)。被告商品に付された「テレビまんが」の記載は、容器の蓋等に描かれた「一休さん」の登場人物等の絵とも相俟って、被告の販売するカルタがテレビ漫画「一休さん」を基にして作られたものであり、絵札に表されるキャラクター等が「一休さん」に由来することを表示するにすぎないとされ、商標権侵害は否定されました。
(2)標章が商品等の装飾・意匠と認識される場合
「POPEYE」等の文字を付記した漫画ポパイの絵を大きく付したアンダーシャツを被告が販売していたことから商標権侵害が争われた事案があります(ポパイ・アンダーシャツ事件)。被告標章は専らその表現の装飾的あるいは意匠的効果である「面白い感じ」などにひかれてその商品の購買意欲を喚起させることを目的として表示されるものであり、一般顧客はこの効果のゆえに買い求めるものと認められるため、被告標章を当該標章が付された商品の製造元あるいは出所を知りあるいは確認する「目じるし」と判断するとは解せられないとされました。
(3)標章が専ら商品の宣伝のためのキャッチフレーズや宣伝文句等として付されていると認識される場合
商標「オールウェイ」を有する原告が、「ALWAYS」等の文字をコカ・コーラの缶に付して販売する行為の差止め等を求めましたが認められませんでした(オールウェイ事件)。「Always Coca-Cola」のキャッチフレーズは、キャンペーンの一環として、長期間にわたり、大規模に広告宣伝活動が行われていたこと、いずれも著名商標である「Coca-Cola」に隣接した位置に一体的に記載されていたこと等からして、被告標章を見た一般顧客は販売促進のためのキャッチフレーズの一部であると認識する。したがって、いずれも商品を特定する機能ないし出所を表示する機能を果たす態様で用いられているものとはいえないと判示しています。

商標権侵害の警告文については、商標的使用に関する議論をはじめ各種論点に関する専門家による検討が必要です。警告文を発送する側も受けた側も専門家に相談し、慎重に対応することが肝要です。