債権法改正について(売買契約)

 吉本 達哉

2019年07月15日

<ポイント>
◆瑕疵担保責任は契約内容不適合責任に変更された
◆変更の背景には特定物売買と不特定売買で責任を区別しない考えがある
◆契約内容不適合責任の要件と瑕疵担保責任の要件は異なる

2020年4月1日に施行される民法改正(いわゆる債権法改正)について説明します。今回取り上げるのは、売買契約に関する改正のうち瑕疵担保責任についてです。

1 瑕疵担保責任が変更された経緯
改正前民法は、売買契約の目的物に欠陥(瑕疵)があった場合の売主の責任を次のとおり区別をしていました。
当事者が特定の物の個性に着目してその特定物を売買の目的にした場合(特定物売買)には瑕疵担保責任を負い、それ以外の場合(不特定物売買)には通常の債務不履行責任を負うとされていたのです。
このように特定物売買の場合にだけ瑕疵担保責任が定められた根拠は、特定物売買は物の個性に着目した売買のため、売主の義務としてはその目的物を引き渡すことだけで、瑕疵のない物を引き渡す義務はないという考え方があったからです。
この考え方からすると売主が目的物を引き渡しさえすれば後から瑕疵が見つかっても何の責任を負わないことになり、瑕疵がないと思っていた買主が不利益を被ります。
瑕疵担保責任は、このような買主を保護するために通常の債務不履行責任とは別に法律で定められた責任とされていました。
しかし、売買の目的物が特定物か不特定物かで売主の責任が異なるというのは契約の当事者の意識からしても不自然で、批判的な見解が多くありました。
そこで、改正民法は売買契約の目的物が特定物か不特定物かで売主の責任を区別しないこととし、瑕疵担保責任は「契約内容不適合責任」に変更されました。

2 契約内容不適合責任の要件
瑕疵担保責任が契約内容不適合責任に変更されたことで、要件がどのように変更されたかを確認します。
(1)「契約の内容に適合しない」要件について
民法改正により瑕疵という要件が契約の内容に適合しないという要件に変更されました。
そして、契約の内容に適合しないかどうかは、合意の内容や契約書の記載内容だけでなく、契約の性質、当事者が契約をした目的、契約締結に至る経緯を始めとする契約をめぐる一切の事情につき、取引通念を考慮して評価判断されるべきものであるとされました。
(2)「隠れた」要件の廃止
改正前民法では瑕疵担保責任が認められるためには、売買の目的物の欠陥が「隠れた」ものであることが要件とされていましたが、改正民法ではこの要件は廃止されました。
売買の目的物の欠陥が明白であっても、それが契約の内容に適合しない以上、売主は責任を負うと考えられたからです。
(3)不特定物売買にも適用されること
上記のとおり契約内容不適合責任は不特定物売買にも適用されます。

契約内容不適合責任の効果その他の改正点については次稿で解説します。