債権法改正について(売買契約その3) -契約内容不適合責任-

 吉本 達哉

2019年12月01日

<ポイント>
◆損害賠償請求の要件、賠償の範囲が変更された
◆解除権の行使の範囲が広がった
◆権利行使の期間制限が緩和された

2020年4月1日に施行される民法改正(いわゆる債権法改正)について説明します。今回取り上げるのは、前稿に引き続き売買契約に関する改正のうち契約内容不適合責任(改正前の瑕疵担保責任)の効果についてです。

1 買主の損害賠償請求
改正前民法における瑕疵担保責任に基づく買主の損害賠償請求には、債務不履行に基づく損害賠償請求とは別に規定が設けられていました。そして、瑕疵担保に基づく損害賠償請求は、無過失責任であり、賠償の範囲は信頼利益に限られるとされていました。賠償の範囲が信頼利益に限られるというのは、有効でない契約を有効と信じたことによって受けた損害のみが賠償の対象になり、契約が履行された場合に得られたであろう利益(履行利益)については賠償の対象にならないという意味です。
民法改正により、契約内容不適合責任に基づく買主の損害賠償請求も、債務不履行に基づく損害賠償請求の規定(改正民法415条)に従うことになりました。したがって、契約内容不適合責任に基づく損害賠償請求の場合にも売主の帰責事由が必要になります。また、賠償の範囲についても信頼利益にとどまらず、改正民法416条の定める範囲で認められます。すなわち、売主は、債務の不履行によって通常生ずべき損害に加えて、特別の事情によって生じた損害についても、売主がその事情を予見すべきであったときには賠償しなければなりません。

2 買主の解除権の行使
改正前民法における瑕疵担保責任に基づく買主の解除権の行使についても、債務不履行に基づく解除とは別に規定が設けられていました。すなわち、瑕疵担保責任に基づく解除は、瑕疵のために契約をした目的を達することができない場合に限られていました。
民法改正により、契約内容不適合責任に基づく買主の解除権の行使についても債務不履行に基づく解除の規定に従うことになりました(改正民法541条~)。したがって、契約内容不適合はあるが契約をした目的を達することができる場合でも、その契約内容不適合が軽微であるときを除いて解除をすることができます。民法改正により解除ができる範囲が広がったことになります。

3 買主の権利行使の期間
改正前民法における瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求や解除権の行使は、買主が事実を知ってから1年以内にしなければならないと定められていました。この期間は消滅時効と異なり中断がされない除斥期間であり、買主の負担が大きかったです。
そこで、民法改正により、種類や品質に関する契約不適合を理由とする買主の権利行使については、買主が契約不適合を知った時から1年以内に「通知」をすれば足りるとされました。買主は、1年以内に権利行使までする必要はなく、契約内容不適合の事実を売主に通知するだけで足りるということです。
また、数量や移転した権利に関する契約不適合を理由とする買主の権利行使については、消滅時効の規定に従うこととなりました。消滅時効の規定によれば、買主が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、あるいは、権利を行使することができる時から十年間行使しないときに権利が消滅します。