マタニティハラスメントを防ぐには

 池野 由香里

2019年10月15日

<ポイント>
◆相手の置かれた状況を理解する
◆ワークライフバランスの重要性を理解する
◆上司は周りの理解を得るよう努めるべき

前回はパワーハラスメント、前々回はセクシャルハラスメントについて書きましたが、今回は、マタニティハラスメントについて、書かせていただきます。

まず、マタニティハラスメントについて説明すると、妊娠・出産やそれにともなう休暇取得などに対する嫌がらせ一般を言います。省略してマタハラと言うことも多いです。
以前は、事業主に対する義務として、妊娠・出産等を理由とする不利益取り扱いの禁止と育児休業・介護休業等を理由とする不利益取扱いの禁止を定めていました(均等法、育児・介護休業法)。
しかし、2017年1月より、上記に加えて、事業主に対し、上司・同僚からの妊娠・出産等に関する言動により妊娠・出産等をした女性労働者の就業環境を害することがないよう防止措置を講ずることと、上司・同僚からの育児・介護休業等に関する言動により育児・介護休業者等の就業環境を害することがないよう防止措置を講じることが義務付けられています。

妊娠・出産、育児休業等に関するハラスメントは、大きく、「制度等の利用への嫌がらせ型」と「状態への嫌がらせ型」にわけられます。
「制度等の利用への嫌がらせ型」とは、①上司が、制度等(制度や措置のこと。以下同じ)の利用に関し、解雇その他の不利益な取り扱いを示唆すること、②上司が、制度等の利用の請求等または制度等の利用を阻害すること、③上司・同僚が、制度等の利用をした労働者に、繰り返しまたは継続的に嫌がらせ等をすることをいいます。
「状態への嫌がらせ型」とは、①上司が、妊娠した労働者に対し、解雇その他不利益な取り扱いを示唆すること、②上司・同僚が、妊娠した労働者に対し、繰返しまたは継続的に嫌がらせ等をすることをいいます。
ただし、業務の調整を行うために、休暇等の取得時期をずらすことが可能かどうか労働者の意向を確認する行為や体調に応じて残業量を減らそうとしたり負担の軽い業務に変わらせたりすることは、業務上の必要があるものとして、ハラスメントとして禁止される行為ではありません。

では、マタニティハラスメントやそれに類する行為を防ぐにはどうすればよいのでしょうか。
一番大切なのは、相手の置かれた状況を理解する、ということです。
妊娠中の体調などは、個人差が大きく一概に言えるものではありませんが、一般的な知識(つわりのひどい時期や流産の多い時期、出産が近づいたときの体の重い感じなど)は、知っておかないと、不用意な発言をして相手を傷つけてしまったり、必要な配慮ができなかったりして、大きなトラブルになることがあります。男性であっても、妊娠の予定や希望がない女性であっても、妊娠や出産、流産等についてある程度のことは組織の一員として知っておくことが望ましいと思われます。
次に意識していただきたいのは、妊娠・出産、介護だけではなく、ワークライフバランスの取れた働き方ができる職場は働く人全員にとって働きやすい職場であり、そういう職場であってこそ皆が充実した生き方ができるということです。
例えば、皆が仕事最優先で、どんなときでもやるべきことがあるときはどんな事情があっても休めない、というような職場は、お互いが生身の人間であることを考えるとどう考えても居心地のよいものではありません。
これといった理由もなく怠けたり、そもそも仕事に必要なスキルを身につけておらずその努力もしなかったりするのは論外ですが、お互い仕事には誠実に向き合う前提で、それぞれの抱える事情や体調に応じて働くことができる職場を目指したいものです。
最後に、特に部下のいる方は、上司として、育児介護休暇等について知識を持ち、まわりの理解を得るように配慮することまでが仕事であると意識してください。
正しい知識を正確にすべて覚えるのは簡単なことではありません。細かいところは必要になったときの付け焼き刃でもよいのです。しかし、だいたいどのような制度があるのかくらいは知っておき、必要になった場合は、その制度を円滑に利用できるようにサポートすることも上司の役割です。
これを怠ると職場の人間関係が悪化したり、最悪の場合には、訴訟などの紛争になったりする場合もあります。
お互い生身の人間であり、家庭人としての責任をもつ存在であることを尊重することを忘れないでください。