パワーハラスメントの「加害者」にならないために

 池野 由香里

2019年08月01日

<ポイント>
◆注意するときは一呼吸おく
◆人格を批判しない
◆指導が相手に伝わったか確認を

前回はセクシャルハラスメントについて書きましたが、今回は、パワーハラスメントについて、いつも社内研修などでお話していることを一部書かせていただきます。

まず、部下を注意するときは一呼吸置く、ということです。
仕事のやり方について、ここをこうしてほしい、同じミスを繰り返しているので、繰り返さないようにしてほしい、など、注意する場面は当然あります。
むしろ、そのような注意をすることが上司の責任なのですから、当然業務上必要な注意はすべきです。
しかし、「何回も注意しているのに、また同じミスをしている!」と気づいたその直後に、感情にまかせて、「ちょっと来て!」と注意をし始めると、不必要に感情的になったり言葉がきつくなったりしがちです。
緊急で対応せざるを得ない場合はやむをえないとして、そうでない場合には、一度冷静に相手の立場になって、なぜこのようなことが起こったのか、忙しすぎるのか、指示の仕方に悪いところはなかったのか、何か原因となる事情はなかったのか、など一度考えて、一呼吸おいたうえで、注意をしてください。
そのときに相手の言い分も聞いたほうがよいときもあります(黙り込んでいる相手にしつこく聞くのは避けた方がよい場合もありますが。)。
アンガーマネージメントという言葉がありますが、自分の怒りの感情に支配されて部下を叱責するのは、最悪のパターンです。
感情にまかせた叱責は、相手に響きませんし、萎縮させてしまい却って業務の効率が下がることがあります。
極端な場合には、部下が離職したり、病気になってしまったりすることもあります。
感情的にならないためには自分自身の体調も整え、体調が悪いときはそのことを自覚してブレーキを踏み気味にする必要があります。
注意や指導は、あくまで業務の効率をよくするためであることを忘れないようにしましょう。

次に、注意するときは、指導が必要な具体的な行動に焦点を当てるようにして、性格に対する非難や人格の否定はしない、ということです。
指導する側としては、ついつい、ミスの原因を考えるあまりに、「君はいつもツメが甘いんだ。」、「本気でやっていないからこのようなことになるんだ。」、などの根幹的な原因を指摘しがちです。
ただ、言われる側にしてみれば、このようなことを言われても今後どうしたらよいかわからず、ただ自分はだめな人間だと思われているのだ、としか受け止められないのではないでしょうか。
何が問題で、同種のことを起こさないようにするためにはどうすればよいのかについて、具体的な指導をするほうが、指導として効果的です。
「馬鹿」、「給料泥棒」などのいわゆるNGワードを発するべきでないのはもちろんですが、なるべく前向きになれる具体的な指導をするように心がけましょう。
 
さらに、指導後、その指導内容が部下にわかったか確認する作業も大切です。
このような習慣をつけておけば、あらかじめ自分の伝えたい指導内容を明確にする必要があるため、一方的に部下を怒鳴り散らすというようなことは減少すると思います。
指導は、あくまで、一定の内容を部下に理解させ今後の業務の改善に繋げるために行うものであって、上司が不満足な状態であることを一方的に伝えることではないことに留意しましょう。

このようにいろいろと書きましたが、言うは易く行うは難し、のとおりなかなか難しい問題です。
しかし、上司として部下の指導はせざるをえず、かといって、部下が次々とやめてしまったり、体調を崩したりするようであれば、上司としての能力が問われますし、悪質なケースであると認められれば、人事上の懲戒処分や、望まない人事異動、部下からの損害賠償請求訴訟など、様々なリスクが発生します。
部下への指導は業務の一環として当然行うべき事柄ですが、ことさらに不愉快な言い方をしたり感情にまかせた言い方をしたりすることには何のメリットもありません。
なるべく気持ちのよい人間関係を構築することが、自分を含め周囲の人間や会社の利益につながるということを忘れないでください。